北朝鮮側は米朝首脳会談(6月12日)前後に行なわれた日朝の接触で、その2人以外に「新たな入国者はいない」との説明を変えていないと報じられている(7月21日付、共同通信47NEWS)。北は「帰国させるとしても2人で終わり」という姿勢なのだ。

 それにもかかわらず、安倍首相が所信表明で「不幸な過去の清算」に言及したのはなぜか。金正恩との首脳会談に乗り遅れた安倍首相が、拉致被害者「全員帰国」の目標を、とりあえず「2人帰国」から始めるという外交的妥協に傾いたからではないか。

 それは「4島返還」がとりあえず「2島返還」になった北方領土交渉と同じ構図に見える。歴史に名を残すことを焦るあまり、「合格ライン」を下げていくことは、国家を大きな危険に晒す。

「安倍首相に残された任期は、“もう3年を切った”と考えなくてはならない。国内外の問題・論争を解決して、ロシアと平和条約を結ぶためには、長いとはいえない時間だ。日中国交正常化合意から平和条約締結までは6年かかったし、北朝鮮との国交正常化交渉開始が盛り込まれた平壌宣言からは16年が過ぎたが、交渉の道筋すら見えない。本来、『国交回復』にはそれだけの時間がかかる。日本側にだけ“タイムリミット”がある状態で交渉すれば、相手に足下を見られてしまう」(自民党長老議員)

 国家の根幹をなす「領土」を巡って妥協する姿勢を見せれば、竹島を不法占拠する韓国や尖閣諸島への野心を隠さない中国にまで“日本は与しやすい”という印象を植え付ける。そうなれば、将来の日本にとって悪影響になりかねない。「歴代最長の安倍政権は“負のレガシー”(政治的遺産)しか残さなかった」という歴史の刻まれ方をする危険も孕みつつ、任期は日々少なくなっている。

※週刊ポスト2018年12月7日号

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