一方、日本のホテル清掃の教育現場はどうなのか。多くのホテルへハウスキーパーを派遣する、九州ビルサービス株式会社代表取締役の古村勝氏によると、「スタッフ教育の充実には特に注力している」という。人材難の時代ゆえに内容の濃い研修会を実施するのは当然として、フォローアップも重視しているとのこと。
「例えば、トイレを“ハウスキーパーの視点”で掃除すると漏れ抜けが必ず起こる。自分が実際のゲストという目線を特に重視している」とも語る。今回の件は全く次元の違うレベルの話で唖然としたが、良い機会なので研修会でくだんの動画を鑑賞、ハウスキーピーングの原点とは何かを再確認したという。
繰り返される信じがたい清掃実態であるが、やはり中国のホテル利用に際しては自衛策を講じる必要がありそうだ。世界130カ国へ渡航、中国での滞在経験も豊富なトラベルライターの白川淳さんは、
「マイカップの持参は理想だが、高級ホテルであろうが客室のコップを使う場合は洗うのが常識。使わないという選択もあり。その他の備品でも気になる人は除菌ペーパーかスプレーを使用すべき。いずれにしても一般の食堂で出される箸の衛生面すら信用出来ない国と心してかかるべき」
という。自国のホテルを利用する中国人でも自衛策は常識のようだ。消毒済みとあっても信用できない、熱湯消毒するのは当然。自分のタオルやシーツを持って行くという声もあった。
ホテル側も対策には頭を悩ませている。清掃員自身が作業前にカメラを設置して清掃する、というビデオ監視システムを導入するホテルもあるらしい。ホテルは「ハード」「ソフト」そして「ヒューマン」といわれる。人を信用できないホテルは何とも悲しい。