今後は、ルノーが日産への出資比率を引き上げたり、逆に日産がルノーへの出資を積み増すこともあり得るほか、可能性は低いかもしれないが、ルノーの日産の持ち株43%を日産が買い取る事態もゼロではない。いずれの状況になっても、三菱自動車は日産と一蓮托生だ。
企業規模や提携の背景は異なるが、過去、2009年にスズキがフォルクスワーゲン(VW)と資本提携し、VWが約20%のスズキ株を持った際も、2年後の2011年には両社の対立が表面化して提携解消を発表。ただし国際仲裁裁判所が中に入り、スズキがVWから株の買い戻しができたのは2015年と、実に4年間も「冷戦」が続いていた。その買い戻し額は約4600億円だった。
もし仮に、同じことを日産がしようと思えば、買い戻し額はスズキのケースに比べて3倍から4倍の巨額になると目される。ただ、異業種ではあるが、サントリーホールディングスが米国のウイスキー大手、ジムビーム社を買収した時も、金額は1兆6000億円にのぼった。資金調達のスキームがうまく組めれば、日産にもできないことはないだろう。
場合によっては、三菱自動車に20%出資して持ち分法適用会社にした三菱商事(今年、三菱重工や三菱UFJの持ち株分を三菱商事が買い取ったため)が、投資資金潤沢で業績も絶好調なだけに、一役買うこともあるかもしれない。
同社は営業グループを10の括りに改編し、来年4月からは「自動車・モビリティグループ」もスタートする予定で、自動車ビジネスにはより一層、注力していくからだ。とはいえ、現実的な解としては、3社連合は維持しつつ、日産がルノーと対等に近づく人的、資本的構成に、どう持っていけるかが焦点になっている。
来年の東京モーターショーイヤーは新車登場が多くなる年と言われ、日産でいえば「ジューク」や「フーガ」「エクストレイル」、三菱自動車も「ekワゴン」や「パジェロ」がフルモデルチェンジすると目されている。今年、20年ぶりにフルモデルチェンジされたスズキの「ジムニー」が大人気となったことから、三菱自動車も軽四駆の「パジェロミニ」復活の待望論も出てくるかもしれない。
3社連合の経営の主導権を巡る混乱や攻防が長引けば、それだけライバルメーカーを利することにも繋がり、何よりもユーザー不在の戦いだ。なるべく早い決着は、日産やルノー以上に、これ以上振り回されたくない三菱自動車のほうが、より強く望んでいるだろう。