国内

火葬場新時代、35万円の火葬場を利用する人はどんな人?

外観からも高級感が溢れる四ツ木斎場

 かつてのイメージを覆すほどに変化している昨今の火葬場。その新潮流を『いまどきの納骨堂』(小学館)の著者であるノンフィクションライターの井上理津子さんがレポートする。

 * * *
 2016年12月、都内に斬新な火葬場施設が出来ていた。火葬場は、全国的にほとんどが公設だが、東京だけ例外で、23区内に9か所ある中で、公設は臨海斎場(太田区)と瑞江葬儀所(江戸川区)の2か所だけ。民営7か所のうち6か所は東京博善株式会社(本社、千代田区)の経営で、その1つ、四ツ木斎場(葛飾区)がリニューアル時に設けた「貴殯館(きひんかん)」だ。

 島田裕巳著『葬式格差』によると、たいがいの自治体では、1万円前後で火葬できるという。たとえば、建築家の伊東豊雄さんが設計した埼玉県川口市の「川口市めぐりの森」、岐阜県各務原市の「瞑想の森 市営斎場」とも公設だ。火葬料金は市内居住で12才以上なら、前者が3万円(市外在住者10万円)、後者が1万円(同4万円)だが、四ツ木斎場の「貴殯館」は何と35万円である。

 葬送ジャーナリスト、碑文谷創さんによると、一体の火葬に、燃料や火葬炉の焼却費、人件費など経費が約6万円かかるという。公設の場合、火葬料金との差額は税金が投入されるが、民間経営は独自に価格設定される。東京博善の経営する6か所の火葬場で最も多いのは5万9000円である。2基の炉が個室形式になった10万7500円の「特別室」と、17万7000円の「特別殯館」もこれまで設置されてきたが、「貴殯館」の35万円は破格だ。

残念ながら、東京博善は取材門戸を開いていない。しかし、広報担当者が「葬儀社の人に伴われた下見客」としてなら、「貴殯館」の見学が可能と示唆してくれたため、旧知の葬儀社・株式会社杉元(文京区)本郷事務所所長の長谷川一さんが便宜を計り、連れて行ってもらった。

 四ツ木斎場は、住宅や商店が密集する立地のため、「自然の中に」は望めない。葬儀用の部屋や、一般的な炉前ホールがあるごく普通の建物のフロア続きで、ガラス戸を隔てた場所に「貴殯館」があった。

 その入り口で目にとまった、書家・柳田泰山の揮毫だという「貴殯館」の文字を指して、長谷川さんが、「『殯』は、もがりのことですね。貴人の遺体を棺に納め、祀ることを意味します」と教えてくれる。ロビーに歩を進めると、床はふかふかの絨毯で、靴音も吸収する。静寂の別世界が広がっていた。

「2室ございまして、1日4組まで。2時間半、ご利用いただけます」とスタッフが説明する。

 メインの部屋に入った。火葬炉と直結し、故人に「最後のお別れ」をする部屋だが、高級感に溢れ、一流シティーホテルのパーティールームとまったく遜色がない。100平方メートルほどあろうか。ゆったりと80人は入れそうだ。天井もうんと高い。壁は肌目の模様が細かな大理石で、ソファなど調度も見るからに高級そう。焼香台の上に置かれた鈴や香炉など仏具はすべてオーダーメイドだという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン
ネットテレビ局「ABEMA」のアナウンサー・瀧山あかね(Instagramより)
〈よく見るとなにか見える…〉〈最高の丸み〉ABEMAアナ・瀧山あかねの”ぴったりニット”に絶賛の声 本人が明かす美ボディ秘訣は「2025年トレンド料理」
NEWSポストセブン
千葉大学看護学部創立50周年の式典に出席された愛子さま(2025年12月14日、撮影/JMPA)
《雅子さまの定番カラーをチョイス》愛子さま、“主役”に寄り添うネイビーとホワイトのバイカラーコーデで式典に出席 ブレードの装飾で立体感も
NEWSポストセブン
審査員として厳しく丁寧な講評をしていた粗品(THE W公式Xより)
《「脳みそが足りてへん」と酷評も》粗品、女性芸人たちへの辛口審査に賛否 臨床心理士が注目した番組冒頭での発言「女やから…」
NEWSポストセブン
12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
宮崎あおい
《主演・大泉洋を食った?》『ちょっとだけエスパー』で13年ぶり民放連ドラ出演の宮崎あおい、芸歴36年目のキャリアと40歳国民的女優の“今” 
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情