「善良なサラリーマンだった主人公は、がんになったことで目覚めることができ、組織の構造からはみ出しても自分の夢を満たすことに奔走しました。彼は善き人であることをやめて正直な人間となることで、残りの人生をまっとうに生き切ることができたんです」
患者が正直者になれば、医者も変わるとなかにし氏は主張する。
「医者にしても、丸投げしてくる患者には魅力がないんです。恋愛だって、“俺にぞっこんの女だ”となると何の興味もわかないでしょう(笑い)。でも患者が本気になって、医者と闘うくらいの真剣味を持って接すると、“医者と患者”を超えた人間同士の会話が成立する。僕は最初のがんの時に医者と正面から向き合ってよい人間関係を築いたから、再発してもずいぶん助けてもらえました。患者が治療に対する情熱や強い意欲を持つことは、がんと闘ううえで欠かせません」
※週刊ポスト2018年12月21日号