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認知症とともに生きる希望を示す女性の人生

 近所のスーパーで買い物に手間取っていたとき、店員に声をかけられた。思い切って、自分が認知症であることを伝えると、店員は欲しい商品をそろえてくれるなど、快く手助けしてくれた。このときの体験から、山田さんは認知症であることを隠さないことが大事と思った。

「周囲に認知症であることを隠して、閉じこもることがいちばんいけない」

 認知症の症状は少しずつ進んだ。山田さんの場合、人の顔や名前は比較的覚えていられるが、空間認知機能が著しく低下した。空間の感覚が低下すると、服を着るのも難しくなる。

 袖に腕を通してから着るもの、頭からかぶるもの、足を通してはくもの、いろんな服に合わせて、どう体を動かしたら着られるのかがわかりにくくなっていたのだ。服の表と裏もわからない。その結果、着るだけで4時間もかかってしまうことがある。

 しかし、人が少し手助けをしてくれたら、着替える時間は数分ですむのだ。好きな洋服を着られれば、外出ができる。

 同居する娘さんとは、ついつい喧嘩になることも多いが、おおむねいい関係が続いている。娘さんが成人したら、自分も、娘さんも自由な生き方をしていい、と考えている。

 娘さんとの関係がうまくいっているコツを尋ねると、「半分だから」と言う。

「どういうこと?」と聞き返すと、半分は娘との生活、あとの半分は交際している男性との生活だという。その男性とは、認知症と診断された前後に付き合い始めた。

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