国内

オウム死刑囚・井上嘉浩 獄中記と「死後に届いた手紙」

井上嘉浩は獄中で何を考えた?(共同通信社)

 2018年最大のニュースのひとつは、麻原彰晃(本名・松本智津夫)らオウム真理教の幹部13人が死刑執行されたことだ。地下鉄サリン事件などの凶行は“負の平成史”として決して忘れることができない。彼らは20年超に及ぶ獄中生活で何を考えたのか。そのひとり、井上嘉浩(享年48)について、長年交流を続けてきた門田隆将氏(作家・ジャーナリスト)が綴る。(文中敬称略)

 * * *
◆執行当日の朝

 二〇一八年七月六日金曜日午前七時半。前夜から記録的な豪雨が西日本全体を覆う中、大阪市都島区にある大阪拘置所に起床のチャイムが鳴り響いた。

 大阪拘置所は、西側にある正門から見て東に向かって四棟、その奥に二棟、さらに中央棟から北と東に向かって放射状に延びる三棟、計九つの収容棟から成る。ここに未決囚や、初犯で犯罪傾向が進んでいない受刑者、あるいは確定死刑囚など、多くの収容者がいる。

 屋内にいても、叩きつける雨音が耳を突く。西日本全体で実に二百人を超える死者を出し、のちに「平成三十年七月豪雨」と名づけられる線状降水帯がもたらした雨は、大阪でも異常なものとなっていた。

 この朝、死刑囚が収容されている舎(注=大阪拘置所では「棟」ではなく「舎」を使う)の六階には緊張感が走った。同階にいる死刑囚は全部で七人。起床チャイムを待っていたかのように、何人もの職員が突然、このフロアに姿を現わしたのだ。彼らは、靴音を立てて廊下を歩いていく。職員の中には帽子に金線が入った幹部までいた。

 間違いない。今日は死刑の執行がある。だが、これほど早くから執行が始まるのは異例中の異例だ。こんなに早いなら、執行される死刑囚には、洗顔も歯磨きも、そして朝食をとるのも許されないことになる。

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン