ところで「新潮45」休刊(実質廃刊)のきっかけを作った小川榮太郎は、「正論」本年五月号には「恋愛至上主義―日本人が死に至る病」を執筆している。これについて、私は本誌九月七日号で、その日本語表記のいいかげんさを批判しておいたが、小川の主旨に一理がないわけではない。
小川はここで、日本の人口減少の要因に恋愛至上主義を挙げ「社会や大人が〔結婚〕させる」見合い結婚が復活すれば人口回復も望めるとする。確かに、結婚したくても相手を見つけにくい人は多く、見合い写真を携えた世話焼きおばさんの活躍に期待もしたい。だが、先進国こそが人口減少に悩む現実を考えると、教育投資の高額化が少子化の大きな要因にもなっている。親族のつながりが強い韓国でも人口減少は深刻なのである。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。
※週刊ポスト2019年1月1・4日号