プロ入りする大阪桐蔭4人衆の練習着姿(写真/マスターズスポーツマネジメント)

──何か具体的なアイデアをお持ちですか?

西谷監督:100回の歴史を紡いできた伝統のある甲子園ですから、150回、200回の将来に目を向けていかないといけません。将来の野球界は将来の人々の責任ではなく、今携わっているものの使命だと思います。

 昨年6月16日に香川県に招待試合で行ったとき、試合後にキャッチボール・イベントに参加しました。野球界の未来を担う子供たちは高校野球選手を前にして、目が輝いていたので、貢献できれば良いと感じました。

 U18アジア選手権に出場した高校日本代表の壮行試合で、神宮球場で、小学1〜3年生を対象にした野球教室を開催したのは素晴らしいことだと思います。学生野球憲章の範囲の中で、少年たちとそんな触れ合いをしていければいいです。プロ野球選手はみんなの憧れですが、高校野球も憧れの近所のお兄ちゃんとしての役割を果たせたら良いと考えています。

──高校野球の1番の魅力は何だと考えていますか。

西谷監督:チーム全員の気持ちが一つになり、勝った時は嬉しいです。今回のチームはただ優勝しただけではなく、試合に出ることのできない選手たちも頑張ってくれた学年で、良いチームだったと思います。

──甲子園の舞台で、春夏通算7度目の全国制覇は歴代最多ですが、平成という時代を振り返ってください。

西谷監督:「どうしたらPL学園に勝てるだろうか」ということを考えてきたのが監督人生の始まりでした。「いつかPL学園に勝てるチームを作りたい」と思って、毎日練習して、駆け抜けたのが平成という時代だったと思います。そのPL学園野球部がなくなってしまうことなど、想像もできませんでした。

 先日、日本高野連の育成功労者表彰を受賞した横浜野球部前監督・渡辺元智氏 の「受賞を祝う集い」で、天理高校の中村良二監督、智辯和歌山の高嶋仁監督、明徳義塾の馬淵史郎監督などと、同じテーブルになり、何か感慨深い気持ちになりました。

──甲子園や神宮でも「44年会」の同級生監督が大活躍しています。

西谷監督:全国制覇したのが、長崎県立清峰高校で吉田洸二監督(現山梨学院監督)や花咲徳栄の岩井隆監督がいます。大学野球では、日本体育大学の古城隆利監督、上武大学の谷口英規監督、慶応義塾大学の大久保秀昭監督などがいます。

──これからは目標であり、追われる立場になるわけですね。

西谷監督:そうですね(笑)。50歳になりますが、未だに甲子園では最年少監督の感覚があります。横浜高校の渡辺前監督、帝京高校の前田三夫監督、常総学院の木内幸男前監督、大垣日大の阪口慶三監督、智辯和歌山の高嶋前監督、明徳義塾の馬淵監督のような、大監督の先輩たちの中にまだいるような感覚だからです。今、甲子園の監督会議で名刺交換をすると、皆さん自分より若い監督が増えたと思います。

 昨年の夏の甲子園1回戦で、小針崇宏監督が率いる作新学院と試合をしました。小針監督は大阪桐蔭OBで言えば、中村剛也(埼玉西武ライオンズ)と同じ世代なので、正直やりにくかったです。昔は渡辺前監督を「絶対に倒してやる!」と思って戦っていましたが、小針監督に、「よろしくお願いします」と言われたら何か拍子抜けしました。考えれば、50歳といえば、甲子園出場監督の中ではベテランの域ですが、その感覚がまだありません。これからそのギャップを埋めていかなければならないと思います。どっしりと構えていきたいですが、まだ複雑な気持ちです。

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