単なる子供の空想ではないか──トモ君の父親は最初はそう思ったが、それでは説明できない具体的な話もあったという。トモ君が4歳の時、テレビで列車事故のニュースを見てこう言った。
「イギリスでもサウスオールで列車事故があったよ。テレビで『事故です。事故です』と言っていて、人が死んでしまった」
父親が調べると、確かに1997年9月にロンドン西方のサウスオールで、7人が死亡し139人が重軽傷を負った列車の衝突事故があった。トモ君が生まれる2年以上前の事故だった。大門教授が説明する。
「トモ君は他にも、生まれる前のカーペンターズのヒット曲『トップ・オブ・ザ・ワールド』を口ずさんだり、2歳の時には、平仮名より先にアルファベットを覚えて、自分の名前をtomoと綴ったそうです。『数字が好き』だと言い、教えてもいないのにすらすらと二乗の計算もできた。
研究では、トモ君のように、“知らないはずのことを語り、できないはずのことができる”など、生まれ変わりと思われる事例の収集に際して、厳格な要件を定めています。トモ君の場合、母親が彼の発言を克明に記録していました。トモ君の記憶は非常に具体的で、信憑性が高いように思われました」
◆「前の人」の記憶は7歳で消える
トモ君は3歳で初めて地球儀を見た際に、イギリスのエジンバラの場所を指差し、「この辺りに住んでた」と話した。時折、「イギリスのお母さんに会いたい」と涙ぐむこともあった。
しかし、7歳を過ぎると“前世の記憶”はすっかり忘れてしまったという。