その頃、南アでは、ゾウを守るためにすべての象牙市場を閉鎖するかどうかを決める国際会議が開かれた。中国が「全市場を廃止すべきだ」と方向転換を図るなか、象牙の印鑑文化を持つ日本は「象牙市場の維持」を主張。世界的な反発を浴びながら、玉虫色の規制に落ち着いてしまう。
殺されゆくアフリカゾウ。絶滅をなんとか阻止しようとする人々。密猟への関与が指摘される中国政府。象牙市場を死守しようとする日本。その実態を実際の現場取材や当事者のインタビューによって解き明かす。
【受賞者の言葉】
シリアで武装勢力に3年以上拘束され、命からがら帰国した日本人ジャーナリストが各方面から強烈なバッシングに晒されているが、世界には実際に現場に足を運ばなければ、垣間見ることができない光景、知り得ることができない事実といったものが存在している。
時に身を危険に晒してでも、闇の中に潜む「対象」に肉薄し、自らつかみ取ったその「真実」を、触覚や嗅覚、味覚といった五感を駆使して再構築し、物語として提示する。その決意と迫力こそが、ノンフィクションの駆動力を決定づけると最近つとに考えている。
アフリカで今、何が起きているのか。粗末なカラシニコフ銃によって、全滅させられていくアフリカゾウの群れ。頻発するイスラム過激派のテロ。「最後の巨大市場」に国家的な野望を抱いて進出を続ける中国政府。象牙市場を守り抜きたい日本……。