「Aさんが、Bさんとのコミュニケーションにモヤモヤを感じるのは、会話全体が不自然で違和感があり、Bさんの意図や理由を把握できないことにあります。しかも、そのイヤな感覚は、食事が終わってからも続いているそうです。これは、首尾一貫感覚の観点からすると把握可能感が脅かされている状態といえます。
また、食事会を続ける意味に疑問を持っていることは有意味感に関係しています。Aさんは、Bさんに気をつかって断れずにいましたが、その食事会がAさんの人生にとって本当に意味のある大切な時間なのかを考えてもらうと、Aさんは今のような会話をしている以上は会っていてもお互いに意味がないという結論に達しました」
このように、選択に困った時は、原点に返るという意味で有意味感にはたらきかけるとスッと答えが出ることがあるという。
◆上のほうから自分を眺めてみる
Aさんのように、あまり相手に反論しない聞き役タイプの人は、自己愛性パーソナリティ障害の傾向がある人からすると、一番の“餌食”にされがちだとか。舟木氏は、もしマウンティングをされたとしても、その場では適当に受け流しておいたほうがいいとアドバイスする。
「そこで反撃すると、相手はヒートアップしてさらに激しいマウンティングをしてきます。その場では適当に相手を褒めておくなどしておき、少しずつ相手と距離を置くようにしましょう。同じ部署などで距離を置くことが難しい場合は、“この境界線からは入ってこないでほしい”という無言のプライベートゾーンをつくり、適正な距離感を保つようにすればよいと思います。
自分なりのかわし方や距離感が身についてきたら、今度は二人の会話を客観的に分析してみるという方法も有効です。イメージとしては、上のほうから二人の会話の様子を眺めている感じです。『あ、また新しい自慢をしてきた。でもやっぱり嘘っぽいな』とか『羨ましいといってもらいたくて必死なんだな』などと相手を観察してみると、どういう反応が効果的かと冷静に考えられます。そうやって、首尾一貫感覚の一つである把握可能感を高めることでストレスを軽減するのです」
人間関係に悩んだ時には、この「3つの感覚」に注目して、自分らしさを取り戻す──そんな習慣を身につけると、あまりストレスを感じず生活していけるかもしれない。
【プロフィール】舟木彩乃(ふなき・あやの)/ストレス・マネジメント研究者。10年以上にわたってカウンセラーとしてのべ8000人以上の相談に対応。現在、筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻(3年制博士課程/ストレス・マネジメント領域)に在籍。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』。