『らくだ』は「談志CD大全 21世紀BOX」(竹書房)に音源が収録されている三鷹での口演で、大家が屑屋にらくだ殺しを依頼するという稀有なヴァージョン。『へっつい幽霊』はDVDブック「立川談志全集」(NHK出版)にも収録されている海老名市での口演で、噺の穴を解決しサゲを変えた完成形。晩年に好んでこの噺を演じていたことが懐かしく思い出される。『居残り佐平次』『富久』『文七元結』は竹書房のDVD集「談志大全」(上・下)に収録されている口演で、『居残り佐平次』は「町田の居残り」として知られる伝説の名演だ。
WOWOWで放送されたのみ、というのは『大工調べ』『権助提灯』だが、特筆すべきは『大工調べ』で、この口演は談志演じる「自由人」与太郎の進化にファンが熱狂した、歴史的な高座。商品化されたことの意味は極めて大きい。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2019年2月8日号