「家族信託」も親が元気なうちに家族に資産の一部を信託し、運用・管理を委ねる制度だ。信託した財産は、受託者である家族に管理を委ねられるため、信託契約の内容次第で家族は広い財産処分権を持つ。ただし、親名義のままの資産は扱えないという制約がある。
メリットとデメリットがあるため、どちらの制度が適しているかは、その親子の置かれた状況によって変わってくる。
たとえば、同じ「親を老人ホームに入れたいケース」でも、【1】「親の家」を売って入居一時金にしたいなら家族信託、【2】ホームの毎月の費用を「親の年金」で払う場合は任意後見にしておく必要がある。
他にも、「親の保有株」を売りたいなら家族信託、親のクレジットカードやスポーツジムなどの会費を解約するなら任意後見、といった違いがあるのだ。
ところが、この2つの制度は家族の安心を支える備えとなるにもかかわらず、まだ認知度が低く、あまり普及していない。「どこに相談し、手続きすればいいのかわからない」──本誌にはそうした声が多く寄せられた。
まず押さえておきたいのは最初の相談窓口だ。
任意後見制度を利用したい場合は、弁護士や司法書士、行政書士に報酬を支払って依頼する方法もあるが、決して難しい手続きではないので、必ずしも介在してもらわなくてもいい。後見制度及び家族信託制度に詳しい遠藤英嗣・弁護士が語る。