「言い間違い、聞き間違い、覚え違い、時代錯誤の勘違いなど、生活の中の小さな失敗も大いに笑えるものです。しかし老い衰えたことが原因となると、とたんに笑えなくなります。弱者は優しく気遣うもの、笑うべきではないと思われているからでしょう。
でも高齢者を弱者と見るのは介護する側の都合。老いて衰えるのは人間の自然な姿です。介護される親からすれば、窮屈でストレスフルな関係かもしれません。たとえ認知症や体の不自由があっても、日常の失敗を人生のおもしろみとして笑い合えれば同等です。もちろん個々に配慮や工夫は必要ですが、親のよくやる失敗やいつもイラッとさせられる場面の中に、笑いの種を探してみてください」
ポイントは、失敗を正したりせず“笑える失敗”として大いに笑い、ウケること。
「“ウケる”とは受け入れられることにも通じます。失敗で笑わせてくれた。“お母さん、おもしろい!”とウケれば、親はとてもうれしく自信を取り戻します。“おもしろい”は最高の褒め言葉なのです。
失敗が日常茶飯事の高齢者は笑いの種の宝庫。そんな見方を受け入れて、ユーモアのスキルアップを図り、高齢者自身が笑いの発信者“シニア・ユーモリスト”になれば、世の中はもっと明るくなると思っています」
【Profile】
高千穂大学人間科学部教授・小向敦子さん。米国イリノイ大学心理学部(専攻)卒業、同大学院教育学部博士課程修了。シニアの生き方とユーモアの研究を中心に、授業では老年学、ゼミでは笑い学に取り組んでいる。近著に『すごい葬式 笑いで死を乗り越える』(朝日新書刊)がある。
※女性セブン2019年2月28日号