「平成の初めに熊本から引っ越してきました。以来、酒を配達してもらっていたんだけど、ご主人がいつもきれいな酒のケースで持ってきてくれる優しさがうれしくて。そのうち、店で飲めるようになったよと言われて、ずっと通っています。奥のこの倉庫跡で飲むと、なぜか親近感が増すんですよね。ここで知り合った人たちは、私同様に転勤族が多いんです。最初はみんな、安心して飲める店探しで暗中模索状態なんですけど、今では、主人夫婦の優しさに触れて、いい店が近くにあった幸運をみんな喜んでいます」(60代、看護師)
その角打ち山小屋で、一組のご夫婦が飲んでいた。
「この場所で何度か飲むうちに、彼女とつき合うことになって、やがて一緒になりました。飲むなら大畑に行こうっていう方程式が自然に出来上がっていて、しょっちゅう二人で元気をもらいに来ているんです。これからもこれは変わらないでしょうね」(40代、通信業)
そんな二人が嬉しそうに乾杯していたのが焼酎ハイボール。
「ありがたいことに辛口なんですよね。うん、甘くないんですよ。ここをわかってほしいなあ。アナログでもないデジタルでもない、元気になれるこの店らしいうまさと言えばいいんだろうか。彼ら夫婦だけでなく、私も大好きですよ」(60代、介護系)
洋一さんは、この店を「人間臭い場所」だという。「居酒屋でなく、酒屋のなかでみんなで話をしながら飲む。だれもが仲良くなれるし楽しめる。これより人間臭い場所はないでしょ。私が考えていたとおりの店になっているんじゃないでしょうか」