「子どもとの別居という話になると、親から罵声を浴びせられることもあります。一時的に預かる子たちはほぼ全員が心理的に満たされていないので、些細なことでイラつきます。私も中学生から“なんだその目は”と言われ胸ぐらをつかまれたこともあります。彼らの背景を理解して、ぐっと堪えてなだめるしかありません」(Aさん)
親と子どもの両方から責められるのが児相職員なのだ。
「児相の職員は、家庭の事情に感情移入しすぎて心を病んだりすることもあります。職員が辞める理由としては、案件が多すぎるとか、夜勤があるといった肉体的なつらさより、心の負担が大きいケースが多いと感じます。私がいた2年間で4人が職場を去りました」(Aさん)
児相への通報は昼夜を問わず寄せられ、ケースごとに異なる子どもと親への難しい対応を迫られる。中には、職員に緊急呼び出し用の携帯電話を持たせる児相もあり、サービス残業を強いられるケースもあるという。児童虐待の相談や通告が激増する今日、児相そのものが“ブラックな職場”と化していないだろうか。杜撰な対応で子どもの安全が脅かされるのは論外だが、多くの真っ当な職員が過酷な環境で仕事にあたっているのもまた真実なのである。
◆取材・文/岸川貴文(フリーライター)