この不法行為に基づく損害賠償請求権は、「損害及び加害者を知った時から三年間」で時効。丙は不貞行為を理由にすると裁判で負けるので、乙の不貞行為の結果、離婚したことを理由とする不法行為責任を追及することにしました。
最高裁は従来通り、夫婦の一方と不貞行為をした第三者は相手の配偶者に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負う場合があるとしつつ、離婚は本来、夫婦間で決められるべきことなので、不貞行為により、離婚するに至ったとしても、その第三者が離婚させる意図で不貞するなど夫婦関係に不当な干渉をし、その結果、離婚したと評価できる特段の事情がある場合を除き、離婚させたこと自体で直ちに不法行為責任を問うことはできない、と判断したのです。
要するに最高裁は、他人の奥さんと浮気しても、その夫に対しての慰謝料支払い義務がない、と判断したわけではありません。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年4月12日号