吉田:南野さんも映画やドラマで忙しくて、レコーディングはいつも夜中。ほとんど寝ていなかったと思うけど、集中力で乗り越えて、表現力もどんどん上がっていきました。2年目からは自分が気に入った曲を集めたカセットテープをくれるようになって、制作にも意見を出すようになりましたね。歌以外にも映画やCMなどで大勢の大人たちと付き合うわけですから、会うたびに「こんなに成長したのか」と驚くことが多かったです。
川瀬:ホリプロの堀威夫社長(当時)は「売れているタレントは1年で3つ年をとる」と言っていた。百恵が絶頂期の時は「今の山口百恵なら、会おうと思えば総理大臣にも会える。俺は会えないけどね」と笑っていました(笑い)。僕たちの仕事って、まず綺麗な造花を作るんです。でも売れてきた子は自分で茎を作って水を吸い込んじゃう。そうやって成長して、やがて本物の花になるんです。
【プロフィール】
◆かわせ・やすお/1947年生まれ。1969年ホリプロ入社。和田アキ子、井上陽水、山口百恵、堀ちえみなど、現在までに約1600曲をプロデュース。新著『ビートルズ全213曲のカバー・ベスト10』発売中。
◆よしだ・ただし/1953年生まれ。1976年CBS・ソニー入社。1978年より邦楽ディレクターとしてSHOGUN、原田知世、南野陽子、郷ひろみ、知念里奈など50組以上の楽曲制作を担当。現在は音楽制作会社の代表。
【取材・構成】濱口英樹
※週刊ポスト2019年4月26日号