国内

盛り上がる迷惑老人ネタ 指弾しているだけでいいのか

ごみ収集車と乗用車が衝突し、歩行者がはねられた事故現場を調べる警察官(時事通信フォト)

 東京・池袋で80代男性が運転する自動車が暴走し、次々と10人もの歩行者をはねる事故を起こした。こういった事故がおきると「老人による暴走」であることが強調されるしかし、ことさら「老人による迷惑行為」であることを強調するピックアップの仕方は、そろそろ限界があるようにも感じる。ライターの森鷹久氏が、いつかは誰もが老人になることを念頭に置いて、近ごろの迷惑な高齢者問題について考えた。

 * * *
 横浜市内を走るバス内で酒に酔い、女性客と口論をする高齢男性が、幼い子供が座る一人がけ席に強引に割り込み「老人に席を譲れ」「こんなチンピラ(な子供)」と暴言を吐き続ける動画がSNS上で拡散し、テレビでも報じられた。ネット掲示板でも話題になり、この高齢男性への非難が相次いでいる。騒動の起きたバスに偶然乗り合わせた会社員の男性(46)が苦々しい表情で証言する。

「はっきり言ってよく見る”迷惑な老人”の光景ではありました。また老人か、と周りは最初見て見ぬ振りをしていましたが、彼があまりにも傍若無人な態度だったので、周囲からも非難のささやきや舌打ちが漏れ聞こえていました」(会社員の男性)

 その数日後には、愛知県内の地下鉄で、閉まろうとするドアになぜか手や荷物を何度も意図的に挟み続ける高齢男性の動画が撮影され、ネット上で拡散した。車内は多少混んでいたものの、それでもドアの開閉に支障をきたすほどの混雑具合ではない。動画を見ると、
その男性は確かにわざと手や荷物をドアに挟もうとしている。

「取材したところ、その男性は最初急にドアがしまったことに驚いていたようでした。近づいた駅員に文句でも言おうとしていたようですが、聞き入れてもらえないとなるや、何度も手でドアを塞ぎ、抗議しようとしていたそうです。最後には近くにいた客に咎められた。この件で地下鉄のダイヤが数分乱れたそうです」

 目撃者などに取材した民放局のディレクターはこう説明をするが、同時に“大した話”ではないとも話す。

「いや…これをテレビで流すのはどうかと思いましたが、ネットでも盛り上がっているし放送されたみたいですね。ワイドショーなどではそこそこ反響もあり、長尺で取り上げられました。バスの件と同様、迷惑老人ネタは数字(視聴率)を稼げるのかもしれません」(民放局ディレクター)

 ちょうど一年前、昨年四月にも同様の「迷惑老人ネタ」がネット上で盛り上がったという。

「東北地方の電車内で“敬老者が座る”と書かれた紙が座席に置かれている写真がSNS上にアップされました。地元の老人会メンバーが電車に乗って花見に行くところだったそうですが、関係者が”気を利かせて”老人たちが乗り込む駅よりも手間で、座席に紙を置いて回ったのです。うちの番組では“ネタにはできない”となりましたが、ワイドショーやネット上では盛り上がっていました。この一年で、迷惑老人ネタは一気に取り上げられるようになり、コンテンツの一つになったという感覚はあります」(民放局ディレクター)

関連キーワード

関連記事

トピックス

”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン