芸能

歴史作家が分析 映画『キングダム』戦闘シーンのリアリズム

映画『キングダム』のインターネット公式サイトより

 古代中国を舞台に、秦の始皇帝の中華統一に至る道程を描いた漫画『キングダム』が映画化され、話題となっている。見どころとして語られる大迫力の戦闘シーンの秘密を、『春秋戦国の英傑たち』の近著がある歴史作家の島崎晋氏が検証する。

 * * *
 漫画を実写化する際に直面する問題はいくつもある。俳優の人選もそうなら、アクション・シーンをいかに描くかもそうである。後者について言えば、あまりにCGやワイヤーアクションに頼りすぎると、どうしても安っぽく見えてしまう。かといって、出演者全員にアスリート並みの役作りを要求するのも無理である。その辺のバランスは非常に難しいのだが、映画『キングダム』はその問題を巧みに乗り越えてくれた。

 まずスケール観という点で言えば、中国ロケができたことの意味は大きい。撮影用の大型セットがすでに数か所あるから、新たに宮殿や城壁をつくる必要がない。低予算では安っぽいものしかできないから、時代考証もしっかりしている既存の現物大セットを利用できたのは、制作側からすれば本当にありがたいことだったろう。

 それから騎兵が進軍するシーンである。CGで馬の数を水増しするのと、本物の馬を使用するのではやはり迫力に雲泥の差がつく。日本国内では5~6頭揃えるのも簡単ではないが、中国ではその100倍用意できる。映画では大沢たかお演じる王騎将軍と長澤まさみ演じる楊端和(「山の民」の王)が騎兵の大軍を従えるシーンが出てくるが、CGではあの迫力は表せない。本物の人馬を何百と動員できたからこそ、観客の期待感を高める効果をもたらすことができたのである。

 春秋戦国時代(紀元前8世紀~紀元前3世紀)は戦争の仕方が大きく変化した時代でもあった。開けた場所での決戦型から、騎兵と歩兵の組み合わせで場所を選ばないものへと変化したのである。それにともない籠城戦も頻発した。近接戦が増えたことから、短柄兵器の有効性も増すこととなった。

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
松田烈被告
「テレビ通話をつなげて…」性的暴行を“実行役”に指示した松田烈被告(27)、元交際相手への卑劣すぎる一連の犯行内容「下水の点検を装って侵入」【初公判】
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
会談に臨む自民党の高市早苗総裁(時事通信フォト)
《高市早苗総裁と参政党の接近》自民党が重視すべきは本当に「岩盤保守層」か? 亡くなった“神奈川のドン”の憂い
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン