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非を認めぬ黒田日銀総裁 近頃、会見場に空席が目立つ理由

◆黒と白の“ゼブラ・ステートメント”

 たとえば、昨年7月31日に行なわれた「枠組み変更」の記者会見で、黒田総裁は「これで『早期に出口に向かうんじゃないか』とか『金利を引き上げるんじゃないか』といった一部の観測を完全に否定できると思う」と語り、異次元緩和の「長期戦入り」へと転換した。その場では、黒田総裁と記者との間で、こんなやりとりが交わされたという。

(問)短期決戦で異次元緩和を始めたのは間違っていたのではないか。

(黒田)間違っていたとはまったく思っていません。(中略)需給ギャップがプラスの状況を続けていけば、必ずや賃金・物価が上昇し、物価上昇率は2%に向けて徐々に上昇していくと思います。

「こうした強弁は、戦時中に連戦連勝、大勝利、必ずや勝てるといった根拠なき強気と楽観を振りまいた『大本営発表』を彷彿とさせます。

 総裁に就任したばかりの、まだ余裕があった頃の黒田総裁は、厳しい質問にもあえて笑顔をつくって答えていましたが、近年はその余裕を失っていて、会見で感情が表に出ることが増えています。また、気に入らない質問をする記者にはあからさまに嫌な顔をし、時にはそっぽを向くこともあります」

 黒田総裁が最も嫌がっていると思われる質問がある。「異次元緩和」は結局、白川方明前総裁がやってきた路線と同じになったのではないか──という問いだ。

 それに対しても、黒田総裁は、「私も政策委員たちも、そのような考えはまったく持っていない」「以前に回帰しているとか、以前と同じという考え方は誰も持っていない」と即座に否定している。しかし、どこがどう違うのか、論理的な説明はない。

「黒田総裁は昨年11月、都内での講演後の質疑応答で、白川前総裁が著書でインフレ目標にこだわる現在の日銀の政策に批判的な説明をしていることについて聞かれると、『日銀は(白川前総裁在任時の)1998年から2013年までデフレ脱却に失敗し、物価安定を維持できなかった』と答えました。白川日銀時代も含めて過去の日銀の金融政策は失敗だった、失敗した総裁に批判される筋合いはないとでも言いたかったのかもしれませんが、ここでも論理的な説明は一切ありませんでした。

 しかし、黒田総裁がどれほど否定しても、当初の『短期決戦』戦略は破綻しており、それを修正すればするほど、白川時代の政策に近づいてくるのは当然でしょう。日銀内では、長期戦に転換したこの『枠組み変更』の発表文は、黒田カラーと白川カラーが混じり合ったまだら模様という意味を込めて、『ゼブラ・ステートメント』と呼ばれています」

◆空席が目立つ日銀総裁会見場

 総裁が記者会見する日銀本店内の会見場には、記者席が130席以上ある。以前の総裁たちの記者会見では、少なくとも8割ほどはいつも席が埋まっていた。黒田総裁の会見も最初の2~3年はそうだったが、いつしか出席者が減り、ここ1~2年は常に半分ほど空席になっているという。

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