国内

無料求人サイト掲載が発端のトラブル、飲食店や中小企業で続発

求人もネットが当たり前になってきた

求人もネットが当たり前になってきた

 アルバイトを探そう、転職しようというときに求人サイトで探すのは今や当たり前。そのニーズに応えるために、サイト数や種類も激増している。そのためか、あまり聞いたことがない会社やサイト名を言われても「新しくできたのか」と受け止め、警戒心を持ちづらい。そんな世の雰囲気に便乗する無料求人サイト掲載を悪用した請求が相次いでいる問題について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 厚労省発表のデータによれば2018年時点での有効求人倍率は「1.61」という高い水準で、10年前のおよそ四倍近い数値だ。一方で「人手不足」が叫ばれるのであれば、労働者へ支払われる対価は上昇すると期待されるもの。ところが、一部の大企業を除くと、現実には労働者に十分な賃金を支払われるようにならず、そのため求人しても人が集まらない。特に、アルバイトや派遣などの非正規人員を必要としている業界では、この傾向が顕著だ。結果、止むを得ず業務縮小したり、商売自体をやめてしまうという歪な事態も発生している。

 事業者にとっては「安価な労働力」を得ることが当面の至上命題でもあり、とある大手求人サイト関係者も「派遣、アルバイトなど非正規の求人数はうなぎのぼり」と話し、業界の活況っぷりを喜ぶ。そして、こうした状況に寄生する人々も、残念ながら、当然現れたようだ。

 関東某県で飲食店を営む中村葉月さん(仮名・30代)の元に、東京のX社から電話があったのは今年2月。脱サラした旦那と一昨年にオープンした中村さんの飲食店では、月曜を除きランチ、ディナー営業を行っていたが、客足が増えとても二人だけでは対応できなくなった。時給千円程度で知人の伝手を頼り学生のアルバイトを雇いなんとかしのいでいたが、今日びもっと好条件のアルバイトは他にもあるのか、思った以上に集まりは悪い。大手の求人サイト掲載に数万から数十万円を払い募集をかけても、面接まで至るのは数人いけばいい方。電話口の男は、そんな状況の中村さん夫妻にとってはまさに「渡りに船」といった内容の話を、早口でまくし立ててきたのだった。

「三週間だけ、無料で求人広告を出してみませんか? という営業電話でした。絶対にお金はかからないと何度も言われ、無料ならいいねって旦那と相談し了承しました。資料の下の部分にチェックマークを入れて、名前と屋号、住所だけ書いて押印すれば済む、煩わしいことはない、そう念押しされました。資料は電話を切ってすぐ、FAXで送られてきました」(中村さん)

 X社の営業担当者は、とにかく名前と屋号、それに住所を記載し押印だけしてくれればすぐに求人広告を出す、と繰り返した。タダだしやってみるか…人材不足に悩んでいた中村さんが軽い気持ちで書類を送り返したのも無理はない。しかし、それから一週間が経っても先方からは何の連絡もなかった。

「これまで掲載をお願いした求人サイトの場合は、お店に営業さんが打ち合わせに来て、後日カメラマンさんが写真を撮って、掲載内容を確認して、という手順でした。そういうのが一切なかったんです。無料だしいい加減なのかもね、旦那ともそう話し、深く考えていませんでした」(中村さん)

 二週間が過ぎたころには、X社のこともすっかり忘れていた中村さん夫妻。そして、資料を返送して三週間が経った三月上旬、身に覚えのない請求書がFAXで送られてきた。

「それはX社からの45万円を支払えという“請求書”でした。一年分の広告掲載料と記載があったのですが、契約をした覚えはない。すぐにX社に電話すると、同じ担当者が出て、三週間は無料だが、越えれば自動的に一年更新、そのことをあなたも同意をしている、と言われたのです」(中村さん)

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン