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無料求人サイト掲載が発端のトラブル、飲食店や中小企業で続発

求人もネットが当たり前になってきた

求人もネットが当たり前になってきた

 アルバイトを探そう、転職しようというときに求人サイトで探すのは今や当たり前。そのニーズに応えるために、サイト数や種類も激増している。そのためか、あまり聞いたことがない会社やサイト名を言われても「新しくできたのか」と受け止め、警戒心を持ちづらい。そんな世の雰囲気に便乗する無料求人サイト掲載を悪用した請求が相次いでいる問題について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

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 厚労省発表のデータによれば2018年時点での有効求人倍率は「1.61」という高い水準で、10年前のおよそ四倍近い数値だ。一方で「人手不足」が叫ばれるのであれば、労働者へ支払われる対価は上昇すると期待されるもの。ところが、一部の大企業を除くと、現実には労働者に十分な賃金を支払われるようにならず、そのため求人しても人が集まらない。特に、アルバイトや派遣などの非正規人員を必要としている業界では、この傾向が顕著だ。結果、止むを得ず業務縮小したり、商売自体をやめてしまうという歪な事態も発生している。

 事業者にとっては「安価な労働力」を得ることが当面の至上命題でもあり、とある大手求人サイト関係者も「派遣、アルバイトなど非正規の求人数はうなぎのぼり」と話し、業界の活況っぷりを喜ぶ。そして、こうした状況に寄生する人々も、残念ながら、当然現れたようだ。

 関東某県で飲食店を営む中村葉月さん(仮名・30代)の元に、東京のX社から電話があったのは今年2月。脱サラした旦那と一昨年にオープンした中村さんの飲食店では、月曜を除きランチ、ディナー営業を行っていたが、客足が増えとても二人だけでは対応できなくなった。時給千円程度で知人の伝手を頼り学生のアルバイトを雇いなんとかしのいでいたが、今日びもっと好条件のアルバイトは他にもあるのか、思った以上に集まりは悪い。大手の求人サイト掲載に数万から数十万円を払い募集をかけても、面接まで至るのは数人いけばいい方。電話口の男は、そんな状況の中村さん夫妻にとってはまさに「渡りに船」といった内容の話を、早口でまくし立ててきたのだった。

「三週間だけ、無料で求人広告を出してみませんか? という営業電話でした。絶対にお金はかからないと何度も言われ、無料ならいいねって旦那と相談し了承しました。資料の下の部分にチェックマークを入れて、名前と屋号、住所だけ書いて押印すれば済む、煩わしいことはない、そう念押しされました。資料は電話を切ってすぐ、FAXで送られてきました」(中村さん)

 X社の営業担当者は、とにかく名前と屋号、それに住所を記載し押印だけしてくれればすぐに求人広告を出す、と繰り返した。タダだしやってみるか…人材不足に悩んでいた中村さんが軽い気持ちで書類を送り返したのも無理はない。しかし、それから一週間が経っても先方からは何の連絡もなかった。

「これまで掲載をお願いした求人サイトの場合は、お店に営業さんが打ち合わせに来て、後日カメラマンさんが写真を撮って、掲載内容を確認して、という手順でした。そういうのが一切なかったんです。無料だしいい加減なのかもね、旦那ともそう話し、深く考えていませんでした」(中村さん)

 二週間が過ぎたころには、X社のこともすっかり忘れていた中村さん夫妻。そして、資料を返送して三週間が経った三月上旬、身に覚えのない請求書がFAXで送られてきた。

「それはX社からの45万円を支払えという“請求書”でした。一年分の広告掲載料と記載があったのですが、契約をした覚えはない。すぐにX社に電話すると、同じ担当者が出て、三週間は無料だが、越えれば自動的に一年更新、そのことをあなたも同意をしている、と言われたのです」(中村さん)

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