しかし、ネットとなると、記事だろうが広告枠だろうが、そんなものは関係ない。あくまでも「コンテンツとして面白いか」だけが勝負になってしまうのだ。となれば、競合は同様の一流企業の皆様に加え、YouTuber、ブロガー、SNSで発信する芸能人などありとあらゆる猛者が対象となる。だったら、従来型の広告制作と何が変わるのか? を考えてみたい。
元々「広告」と名が付くものは、大金をかけ慎重に作っていた。何か月も前からマーケティング的な分析をし、ターゲットを選定し、メディアを吟味し、何案も広告会社が作ってようやく広告主が「これだ!」というものを選んでいた。
しかし、ネットではこのスピード感は一切通用しない。とにかく、世間、いや、ネット上の「空気感」というものが毎日のように変わりすぎるからなのだ。以前ツイッター代行の仕事をしたことがあるが、4週間後のツイートを提出し、先方社内で何段階ものチェックを経て掲載に至っていた。しかし、それでは遅すぎる。
あくまでも、何がここ数日の世の中の流れに合致しているのか?に合わせたコンテンツを出さなくてはいけない。昨年、GODIVAが義理チョコをやめよう、と新聞広告を打ち多数の賛同を得ると、すぐさま「ブラックサンダー」の有楽製菓が義理チョコ文化を応援する、とツイート。これもウィットに富んでいると称賛された。
何かを宣伝したいのであれば、その時々の世間の「空気」に従った方が得をする。ネット広告がテレビを上回る令和元年は、広告そのものへの考え方を変えざるを得ない年でもある。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2019年5月31日号