日本を代表する打者に成長した山田哲人(時事通信フォト)
「実は左打者より、右打者のほうが有利なのではないか」──この「右打者最強説」を専門家にぶつけてみると、意外な答えが返ってきた。
通算306本塁打を放った右の大砲・広澤克実氏は「たしかに一塁ベースに近いのは左打者だが、右打者にも大きなメリットがある」と語る。
「それは“打球を強く、遠くに飛ばすこと”です。パワーを生むためには、利き腕、つまり力が強いほうの腕が、キャッチャー側にあるほうが有利なんです。ボクサーがパンチを撃つ時を想像してみるとわかりやすい。右利きのボクサーが右手でパンチを繰り出す時、肘の関節を畳んで大きく後ろに振りかぶって勢いをつけますよね。バッティングも同じで、キャッチャー側に利き腕があるから、右腕を大きく引いてからボールに力を伝達するわけです。西武の山川は、利き腕でホームランを打つ典型的なタイプですね」
右利きの右打ちは“パワー”において勝る、という指摘だ。実際、今季の本塁打ランキングを見ると、両リーグ10位以内に入る23選手中19人が「右打者」と、広澤氏の指摘を裏付ける結果となっている。
「かつては、右打者は左手で引く力が重要といわれました。しかし、近年では、“引き手で引っ張る”ではなく“利き腕で押し込む”感覚で打つ選手が出てきた。時代に伴って『打撃理論』の変化が出ていることも影響しているでしょう」(スポーツ紙デスク)
野球評論家の遠山獎志氏も「利き手で押し込むスイングをするバッターは、一発があるので一番怖い。ピッチャー心理としては嫌だと思いますね」と語った。
※週刊ポスト2019年5月31日号