ライフ

クリームスパチュラ、開発過程で手で塗るのが愛情では?の声も

akari『クリームスパチュラ』全長15cm、塗布部4.7cm。カラーはピンク、黄色、青の全3色。1280円

 クリームや軟膏を塗るためのスパチュラ(へら)は、手を汚さず使用できるだけでなく、衛生的でクリームの節約にもなる製品だ。akariの『クリームスパチュラ』は吸盤で自立するため、周囲を汚す心配もない。開発のきっかけとなったのは、子供に軟膏を塗っていた元看護師ママのひらめきだった。

『クリームスパチュラ』は、天板に吸盤を取り付けることで自立でき、倒れる心配がない画期的な商品だ。

 開発したのは、元看護師で4児の母でもある、中尾麻里さん。病気で手術をした三男は、術後に抗生物質の投与が続き、お尻が荒れてしまっていた。そのお尻に軟膏を塗っていた中尾さんは、自分の手の雑菌とお尻の雑菌、そしてその雑菌が未使用の軟膏にまで広がってしまうのではないかと気になっていた。

 人の手には常在菌を含む菌が無数にいる。本来、手で軟膏を塗る時は、塗る前後に手洗いを入念にすることが鉄則だ。衛生的に軟膏を塗布できる道具がないかと思い、既存品を探したが、ぴったりなものは見つからず、しばらくは調理用のシリコンのゴムベラを使っていた。そこで、自立式で手を汚さずに軟膏を塗れるスパチュラを開発できないかと思い立った。

 中尾さんは看護師を引退後、子育ての傍ら、雑貨や子供服の輸入、おもちゃの開発を手がける事業家でもある。つきあいのあった通訳者を通じて調べたところ、スパチュラの試作品を作るためには、プラスチックの型を作るための3Dデータが必要なことがわかった。

 さっそくクラウドソーシング(オンライン上での業務発注)で3Dデータを作成しているデザイナーを探したが、国内の工場でサンプルを作ると高額になってしまう。なんとか中国の工場向けのデザイナーを見つけ出し、試作品を作った。

 ところが、吸盤の力が弱く、うまく貼り付かない。吸盤で自立させるには、バランスが難しく、試作を繰り返すことになった。度重なる試作に工場側から「もうこれで最後にしてほしい」と言われた4回目で自立するスパチュラが完成。ようやく生産体制に入る準備が整った。

 サンプルが出来上がった次に必要なのは、量産に必要な金型を製作すること。金型の費用を捻出するためにクラウドファンディングを利用し、わずか2時間で資金の調達に成功した。

 実は開発する際、社員からは「手で塗ればいいのでは?」「子供のお尻を汚いと思ってはいけない。母の手で直接軟膏を塗ることが愛情ではないか?」という声もあったという。

「子育てにおいては、どうしても母親の負担が大きくなるもの。もっと母親目線で、子育てを楽しくラクにできる道具があればいいのにと思う。子供とのふれあいは、お尻じゃなくてもできますから(笑い)」と語る中尾さん。実際、中尾さんのお子さんが軟膏を塗ってほしい時は、この『クリームスパチュラ』を持ってくるそう。

 中尾さんは今後も、看護師としての目線を取り入れたエビデンスに基づいた便利な商品を作っていきたいと、目を輝かせながら語ってくれた。

※女性セブン2019年6月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト