さて、長距離を走ってみた最新の5シリーズの印象だが、基本的には超がつくくらい高性能。エンジンパワーこそ190psにすぎないが、前245mm、後275mmという幅広タイヤで1.7トンちょうどという同クラスの中では軽めの車体を支えるだけあって、急カーブの連続する山岳路をかなりのハイペースで走っても、走りが破綻する気配はまったくなかった。タイヤサイズに余裕があるので当然といえば当然だが、コーナリングスピードはもはや20年前のスーパースポーツ並みだった。
乗り心地は良路ではいかにもプレミアムEセグメントらしい精密感にあふれたもの。サスペンションは巨大なタイヤグリップに負けないよう締め上げられているのだが、小さいピッチの凸凹のカットは秀逸だった。ただし、道が荒れてくるとランフラットタイヤ(タイヤの側面を固く設計し、パンクしても一定距離を走行可能なタイヤ)の悪癖が顔を出し、途端にドタバタ感が強まる。できればしっとりとした普通のタイヤを履いてほしいところだ。
室内のデザインは、いかにも機械的であった昔のBMWの面影はもはやほとんどない。ポプラの木を素材に特殊な加工を施すことで不思議なテクスチャを浮き立たせたウッドパネル、複雑な曲面のアルミ製加飾パネル、室内の至るところに設置された夜間の間接照明など、情感的な演出が目立った。
装備類はこれ以上ないというくらい盛り盛り。車線維持を補助するステアリングアシストをはじめとする高度な運転支援システムや各種警報、コネクティビティサービス、先行車や対向車を避けてライティングするアクティブハイビーム、シートベンチレーションやマッサージ機能など、ほとんど“全部のせ”だ。
秀逸だったのはフロントガラスに映るヘッドアップディスプレイで、走行情報やナビゲーションだけでなく、ステアリング上のオーディオスイッチを触ればチャンネルや曲目が、電話のスイッチを触れば通話履歴などが表示される。センターコンソールやメーター類に目線を落とす頻度は普通のクルマとは比べ物にならないほど少なかった。