だが、そんな丸の内の皇居前という好立地にそびえるパレスホテル東京でも、帝国ホテルの知名度に比べると一般への周知性という面では決して高くはない。それはまず規模の差によるところがあるだろう。付帯施設の規模はもとより客室数900室を超える帝国ホテルに対し、パレスホテル東京は290室とコンパクトである。
じつはこの290室というのは建て替え後(2012年5月グランドオープン)の客室数であり、従前は389室であった。すなわち当初と比較して客室面積の拡充がなされたわけだが、ハードに加え高い質のサービスもあいまってADR(平均客室単価)は向上、富裕層に人気の“知る人ぞ知るホテル”というイメージが定着した。ホテル評論家の間でも評価の高いホテルだ。
事実、ミシュランガイド東京2019では「4つ星+」と帝国ホテルの「4つ星」よりも高い評価を得た。直近ではフォーブス・トラベルガイドのVERIFIED LIST(2019)で“WORLD’S BEST ROOMS”を受賞。これは国内でパレスホテル東京だけであり、国賓を迎えるに相応しい“帝国ホテルより格上”の称号を受けている。
トランプ氏が宿泊先にパレスホテルを選んだ理由は、こうしたホテルの外部評価に加え、外から建物の外観がよく望めるホテルで、コンパクトなホテルかつ周りにお濠もあることで警備のしやすさもあったことが推測できる。
通常こうしたケースでは、政府関係者などからホテルを見学させてほしいといった事前の連絡はあるものの、宿泊者が大統領本人と伝えられるのは直近であるといわれているだけに、国賓、それも米大統領を迎えるホテル側の準備はさぞかし大変だろうというのは想像に難くない。事実、過去にVIPを迎えたホテル関係者は、「警備や守秘義務、おもてなしのサービス面など念入りに行う必要があり、各部門の団結の強さが必須だ」と話す。