飛行機のなかではえんえん文庫本を読んでいた。「何読んでるの」と聞くと「淳之介と理恵のよ。すぐ忘れるから何度読んでも面白いのよ」と言った。スーパーマザーの貫禄のあぐりさんは一〇七歳の長寿を全うして他界した。きら星のごとく輝いていた吉行ファミリーは、和子さんひとりになってしまった。
元旦に手相を占うと、強い生命線が二本も。母に似てきた! いまの心境は「風前の灯」。とは、さすが吉行きょうだい。『そしていま、一人になった』という感慨。この書に出てくる『窓烏』(吉行和子俳号)の句が鮮烈。一〇七歳まで生きそうな勢い。
※週刊ポスト2019年6月21日号