つまり彼らは「かけ子」と呼ばれながらも、電話をかけるよりも、日本からかかってきた電話を受けて仕事をしていたというのだ。

 前出の警視庁関係者によれば、タイで逮捕された15人が関与したとみられる詐欺事件の被害者は、特定の地方に偏らず、中高年を中心としながらも、20歳の若者まで含まれていた。捜査途中なので断言はできないと前置きした上で、被害者らは架空請求ハガキがきっかけの場合もあれば、メールのパターンもあるという。多くの日本人が想像する「特殊詐欺」のターゲットといえば裕福な老人をピックアップした名簿をもとに電話がかかってきた人たちだったが、今回の被害者たちは、以前の特殊詐欺被害者たちほど裕福な階層ではない。これこそが決定的な違いなのだ。

「ハガキやメールを送りつける班、電話をかけてきたターゲットに応じる海外班、金を受け取ったり引き出す現場班、それらを取り仕切る司令班が”四位一体”になり、さらにその上に金主がいる。金主でさえ一枚岩でなく、日本国内の反社勢力、暴力団、海外マフィアが複雑に関与している。情報に疎ければ、金がある老人だけに限らず、若者でもなんでもいいという手法なだけに、高齢者にばかり注意喚起をしていれば良いというわけではなくなったのです」(前出の元暴力団関係者)

 ターゲットを綿密に調べ上げた知能犯罪から「アポ電強盗」のような雑な手法に、そして無差別にターゲットを探し出す「絨毯爆撃」的な手法に移り変わったことは、特殊詐欺の「劣化」とも思われてきた。そして現在は、より無慈悲な「フェーズ」に移行したといって良いだろう。騙されるような金がないから「自分には関係がない」と言い切れる人たちがますます少なくなっていく状況であることを理解されたい。

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン