国内

国際化した特殊詐欺 海外の「かけ子」はどう動いているのか

タイ邦人詐欺団/空港に到着した詐欺容疑の男ら(時事通信フォト)

タイ邦人詐欺団/空港に到着した詐欺容疑の男ら(時事通信フォト)

 特殊詐欺グループの活動が、ターゲットは日本国内であるにも関わらず国際化したことは、先日のタイでのアジト摘発と逮捕、強制送還劇が報じられて以降、多くの人が知るところだろう。強制送還された日本人たちは「かけ子」をしていたと報じられているが、実は電話をかけない「かけ子」という新しい形態のグループ構成員だったことが分かった。なぜ電話をかけない「かけ子」が誕生したのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 タイのリゾート地・パタヤから、日本国内向けに「振り込め詐欺」電話を行なっていたとして、日本人15人が逮捕された事件。

 先月末に容疑者全員の身柄が日本に移され、警視庁が連日の取り調べを進めているが、筆者の取材で、いわゆる振り込め詐欺やオレオレ詐欺など「特殊詐欺」を取り巻く環境の変化が見えてきた。

「訴訟だなんだとハガキを送りつけるだけの方法は、劇場型に進化し続ける日本国内の特殊詐欺事情と比較してあまりに杜撰な方法でした。しかし、これが老人だけを狙ったものではなく、さらに海外の反社会的組織が先導して行なっていたものだとすれば、妙に腑に落ちる部分はあります」

 こう打ち明けるのは、警視庁の捜査関係者。「消費料金に関する訴訟最終通告」などと記された架空請求ハガキは、一昨年ごろから目立って全国各地に送り続けられており、メディアなどでも連日報道され続けた。法務省管轄の行政機関が送り主であるように偽装はしてあるものの、そもそも機関自体が存在せず、記された住所もデタラメであることは少し調べれば容易にわかる。一方的な送りつけによるこんな雑な手法で、いったいどれほどの人が騙され、詐欺の収益になるというのか、ということである。

 筆者は以前、こうした古典的な「送りつけ型」架空請求詐欺について関係者に取材したところ「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」とか「新たなカモリストの作成に使用される」などの証言を得ていたが、今回取材で判明したのは、全く別の理由が存在しているという事実だ。

「去年頃までは、(詐欺電話の)かけ子拠点が国内にあることは普通でした。しかし、警察当局の猛烈な捜査にあい、拠点を地方のホテルやキャンピングカーにするジプシー型も増えてきた。ところが、それでも逮捕されるというので、かけ子の拠点は海外に移されました。海外であれば日本警察も迂闊に手出しはできない。ただ、他人のシマでのゴト(仕事)ですから、現地マフィアなどとの連携は欠かせない」

 九州在住の元暴力団関係者がこう話すように、特殊詐欺は自然と「国際化」を強いられた。その結果、日本国内では当たり前だった「高齢者を狙う」手法も、自ずと変化していったというのだ。

「海外にいるかけ子と、日本国内にいる受け子の連携は難しい。高収入の老人宅を狙い撃ちにする、といった丁寧な仕事もできないとなれば、とにかく無差別的に架空請求ハガキを出しまくったり、ワンクリック詐欺のようなサイトへ誘導するメールを送り続けるほうが実行しやすい。タイで逮捕された15人だけでなく、東南アジアなどの国外で特殊詐欺に関わる日本人の多くは、詐欺メールや詐欺ハガキに引っかかった人からの電話に応じるという、いわば”反響営業”をしていたのです」

関連記事

トピックス

国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
普通のおじさんがSNSでなりすまされた(写真提供/イメージマート)
《50代男性が告白「まさか自分が…」》なりすまし被害が一般人にも拡大 生成AIを活用した偽アカウントから投資や儲け話の勧誘…被害に遭わないためには?
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン