合計8トン──1人の人間が一生で排泄する大便の平均総量である。これだけの量を出しながら、大半の人はろくにその姿形を確認もせず、あっさりと水に流している。だがその大便は、数々の病気リスクを伝える貴重な健康のバロメーターだった。それゆえ毎日の観察=「観便」が大切だ。
例えば、液体状の大便が続くと大腸に潰瘍の可能性がある。大便研究の第一人者で、おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎氏がいう。
「摂取した食物が最終的に大便になって排出されるまでは、短ければ10時間、長ければ100時間ほどと、幅があります。腸内に留まっている時間が短ければ短いほど、水分が腸で吸収されないままなので便は軟らかくなり、反対に時間が長ければ水分が吸収されて硬くなります」
便の硬さと形状の指標として、英国ブリストル大学のヒートン博士が1997年に7段階分類した「ブリストルスケール」がある。1(コロコロ便)から7(水様便)まで、硬さ別にその特徴を分析している(図参照)。
「7にあたるような、液体状でびしゃびしゃの大便は下痢に分類されます。ただし、1~2日だけなら単なる下痢ですが、長期にわたって続くようなら要注意。安倍首相が患ったことで知られる『潰瘍性大腸炎』など、消化不良を起こす疾病の可能性があります」(大竹氏)