――明仁天皇はどんな方なのでしょうか。お人柄を知ることができるエピソードなどはありますか?

永福氏:お人柄についてはこれまでの陛下のご活躍を通して、皆さんそれぞれに感じるところがあると思います。誠実で慈悲深くご聡明。あるいは謙虚で忍耐強く愛情深い。どれも明仁天皇の人徳を表している言葉です。

 最近は、美智子さまと共に被災地を慰問なさっている時の柔和な笑顔が印象深いですが、私は陛下のあの笑顔の下にある頑固さというか、意外と“ケンカっ早い”一面が好きです。

「ケンカっ早い」という表現に語弊があるなら「気が強い」といいますか。国民に親しまれたあの柔和な笑顔は、努力と鍛錬でご自身の“尖がった”部分を押さえて獲得されたようです。陛下のそうした一面は、同級生の方々がそれぞれの著書で披露されていますので、作中でも人物描写の参考とさせていただきました。

 明仁天皇は運動神経抜群で、若い頃はスポーツの上達が非常に早かったそうですが、これは陛下ご自身の“負けず嫌い”な面の表れではないかと思います。こうした「気の強さ」は肝っ玉の太さにも通じています。一度こうと決めたことはブレない姿勢には腹の据わったある種の迫力を感じます。

 それとやはり「研究者(科学者)」としての一面ですね。何をなさるにも明仁天皇は論理的な裏付けと科学的なアプローチ(シミュレーション)を意識されているように思われます。

 例えば作品でも取り上げた「銀ブラ事件」ですが、あれは決して思いつきで取られた行動ではありません。高校最後の定期試験も終わり、後は卒業を待つばかりの三年生の春休みの時期。部活動もなく、寝泊まりされていた清明寮の監視も手薄になっていたのを見計らって仲間二人と一緒に“脱走”したのです。綿密な計算のもとに決行された“軽挙”でした。皇太子になれば今まで以上に自由は制限されてしまう。止むに止まれぬ思いもおありだったんでしょう。

 とはいえ、そこはまだ高校生。すぐに警備担当者の知られるところとなりますが、直ちに身柄を確保しないで“泳がせた”警備側の粋な計らいも、銀ブラを成功させた要因でしょうね。明仁殿下に、かりそめであっても一時の自由を満喫していただいたことは、後々の天皇としての在り方にも若干の影響を与えたのではないかと個人的には思います。

――明仁天皇とこれまでの天皇との“決定的な違い”はどこにあるのでしょうか?

永福氏:歴代天皇はすでに歴史上の人物です。私たちがニュース映像や報道特番を通して辛うじて「知っている」といえるのは、昭和天皇と明仁天皇、そして現在の今上天皇くらいですが…。

 昭和天皇は、明治天皇から始まった近代天皇制で、祖父(明治天皇)、父(大正天皇)から皇統を継がれ、途中(戦後)から「象徴天皇」として方向転換を余儀無くされた方ですよね。在位中に求められる役割が変わられた天皇でもあります。

 次代の明仁天皇は、即位の時から「象徴」として位置付けられ、譲位するまでずっと「象徴」であり続けた、史上初の天皇です。

『明仁天皇物語』では、大きなテーマとして象徴天皇とは何かということを作中で繰り返し述べていますが、明仁天皇は在位中(正確には即位前から)、ずっと「象徴」としての在り方を模索し続けられた。別の言い方をすれば「象徴天皇」というものを生涯を通じて練り上げられた方だともいえます。そういう意味では、全く新しい天皇像を創造されたといっても過言じゃない。それがこれまでの天皇との大きな違いではないでしょうか。

『明仁天皇物語』(小学館)
原作・永福一成 作画・古屋兎丸 監修・志波秀宇
全ての国民に愛され、また、国民とともに歩まれてきた明仁上皇陛下と美智子上皇后陛下。お二人の苦難の旅路を描いた本格ドキュメントコミック。
B6判、216ページ、680円+税、2019年6月28日発売

上皇・上皇后両陛下の半生を描くドキュメントコミック

上皇・上皇后両陛下の半生を描くドキュメントコミック

『明仁天皇物語』より

『明仁天皇物語』より

『明仁天皇物語』より

『明仁天皇物語』より

『明仁天皇物語』より

『明仁天皇物語』より

※『明仁天皇物語』の原作者・永福一成氏と作画・古屋兎丸氏による制作裏話トークイベントが開催されます。抽選でサイン入り色紙プレゼントがあるほか、サイン入りコミックスも先着20名に販売。
日時:2019年10月15日(火)18:00会場、19:00開演
会場:「ロフトプラスワン」東京都新宿区歌舞伎町1-14-7 林ビルB2
チケット:前売1800円、当日2300円
詳細・チケット購入は https://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone/126733

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