国内

「逮捕されたから生きている」中国から強制送還された男の告白

24時間、監視される生活から強制送還で脱出(画像はイメージ)

24時間、監視される生活から強制送還で脱出(画像はイメージ)

 かつて振り込め詐欺グループといえば、逮捕さえされなければ、かけ子であってもまとまった金が手に入り、それなりにおいしい思いをできるものだった。ところが、取り締まりが厳しくなり、拠点を海外へ移す国際化がすすんだことで、グループのメンバーは、まるで収容所で強制労働を課されるような環境に追い込まれている。ライターの森鷹久氏が、日本へ強制送還されて逮捕され「助かった」と語るほど厳しくなった、特殊詐欺グループの現実についてレポートする。

 * * *
「私は何にも知らんのです。2年前にフィリピンに留学に行くといって、今年の正月に会った時も変わった様子はなかった。今回息子が逮捕されたというて家にマスコミがたくさんきて…。逆に記者さんに“どうなっているんですか”と聞いているような状況なんですよ」

 タイ・パタヤから日本向けに「振り込め詐欺」の電話を行なっていたとして逮捕された15人の日本人のうち、リーダー的な立場であったとみられる男(23)の父親が筆者の問いかけに、力無く答える。男は佐賀県武雄市出身、野球留学でお隣福岡県内の高校に進学する、父親にとっても自慢の息子だった。

 高校卒業後は専門学校に進学するも中退し、福岡市内のナイトクラブでDJとして活動していたが、2年前には「フィリピンへ留学する」と話し、父親としても「あっちで勉強している」としか思っていなかった。留学にかかる費用面で家族に頼ったわけでもない。そんな中で起きた「息子の逮捕」だっただけに、まさに寝耳に水の事件であった。

「息子とは一度も話せていない。いまだに何が何だかわからない。リーダー格? まさかそんなね…」(父親)

 一方、同じく逮捕された男の親族は次のように訴える。

「知人から“海外でビジネスをしないか”と誘われ、行ってしまった。特殊詐欺をやるんだと本人がわかっていたかは知りませんが、家族に“帰りたくても帰れない”と連絡をよこしてきていたようです。知人にそそのかされたとか色々勘ぐる部分もあるのですが、全てを明らかにして罪を償ってほしい。とにかく、本人が無事に帰ってきたことに、家族はホッとしています」(親族)

 警視庁による15人の取り調べの詳細はいまだわかっていないが、以前、中国から日本国内向けに「特殊詐欺」の電話を行なっていたとして、現地当局に拘束された後に強制送還、日本の警察当局に逮捕されたX氏(20代)が、自身がかつて置かれていた実情について説明する。

「きっかけは知人への借金です。20万円とかそんなものでしたが、知人から“楽に稼げる仕事がある”と紹介されたのが、海外での仕事でした。なんとなく詐欺なんだろうなとはわかっていましたが、パスポートを取得した翌週には中国に飛びました。空港に着いたら、まず現地の日本人責任者と落ち合い、パスポートと携帯を預けます。そこから車で某都市のホテルに移動し、特殊詐欺電話のかけ子をすると説明を受けました。成果報酬型で、うまくいけば20万円は一週間もせずに返せると。帰国してもいいし、そのまま残って“稼ぐ”のもいい、自由に選べるとのことでした」(X氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト