国内

南海トラフと連鎖で富士山噴火、発生なら政治経済混乱

地震も火山の噴火もプレートの活動によって起きる

 ここ最近、各地で震度4を超える地震が相次いでいる。千葉県北東部では5月25日に震度5弱、6月1日にも震度4の地震が発生。6月18日に発生した山形県沖を震源地とする地震では、新潟県村上市で震度6強、山形県鶴岡市で震度6弱を観測した。さらに6月24日には、静岡県熱海市で震度4の地震が発生している。

 一見、無関係に見える、これらの地震には「繋がり」があるという。立命館大学環太平洋文明研究センター長で災害研究者の高橋学さんが解説する。

「地震は地中にあるプレート(板上の岩盤)のズレで起こります。このプレートは常に動いており、山形県沖地震は、北米プレートがユーラシアプレートと押し合い、境界付近で“逆断層”が生じたことで発生しました。また、フィリピン海プレートと北米プレートの境界は『相模トラフ』と呼ばれますが、千葉県の地震はこの『相模トラフ』がフィリピン海プレートの圧力によって動いたことで発生した。そして、今後もっとも危惧されるのが、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界である『南海トラフ』です」

 政府の地震調査委員会は、今後30年以内に南海トラフでマグニチュード8~9クラスの巨大地震が発生する確率を70~80%としており、被害想定で死者数32万3000人と発表している。

「フィリピン海プレートは東京湾からフィリピンまで続くほど大きい。相模トラフ、南海トラフなどと同時発生的に動く『スーパー南海地震』が起きれば、被害は政府の想定よりもさらに大きくなるでしょう。太平洋プレートやフィリピン海プレートの圧力による地震が各地で連鎖的に起きているし、近年はスーパー南海地震の前兆とみられる内陸直下型地震も多い。政府は30年以内と言っていますが、いつ起こってもおかしくない」(高橋さん)

 地震の連鎖が示すもう1つのリスクが「火山の噴火」だ。

 地震と活火山の関係について、武蔵野学院大学特任教授で地球物理学者の島村英紀さんが解説する。

「火山の噴火にもプレートの移動が関係しています。プレートが押し合うことで地下100km前後の深さでマグマが生まれ、それが地表に押し上がってきて噴火となる。つまり、プレート同士の衝突が引き起こすという意味では、地震も噴火も原理は同じです。地震が頻発しているということは、それだけプレートに圧力がかかっているということなので、活火山の噴火も起こりやすくなっています」

 噴火が最も恐れられる活火山はやはり富士山だ。気象庁は常時観察が必要な火山を指定しているが、富士山はそこに含まれている。

「富士山が最後に噴火したのは江戸時代(1707年)ですが、その49日前に南海トラフで『宝永地震』が発生しています。今後、南海トラフ地震が発生したら、連動して富士山が噴火する可能性は充分にある。300年分のエネルギーがたまっているので、非常に大きな噴火になるでしょう。

 江戸時代の噴火の時は、わずか2時間で江戸に火山灰が降ったという記録が残っています。火山灰がコンタクトレンズと目の間に入ると角膜が傷ついて失明する危険性がある。また、交通や通信、水道などのインフラはすべてコンピューターで動いていますが、ハードディスクの磁気ヘッドと磁性体の隙間に火山灰が入り込んでしまうとシステムが狂ってしまい、政治や経済は大混乱に陥ります」(島村さん)

 南海トラフ地震の発生確率は、日々上がっている。自然現象は食い止めることができないが、非常食や厚底の靴を枕元に用意しておく、避難する際の安全なルートを事前に確認しておくなどの対策は最低限しておくべきだろう。

※女性セブン2019年7月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン