その原因を探るとき、まず注目してほしいのは、今夏はヒットメーカーの脚本家が深夜帯でオリジナル作を手掛けること。
これまで『ひよっこ』(NHK)、『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)、『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)などのヒット作を持つ岡田惠和さんは、金曜23時15分から放送される『セミオトコ』(テレビ朝日系、26日スタート)を。『ごちそうさん』(NHK)、『義母と娘のブルース』(TBS系)、『とんび』(TBS系)などのヒット作を持つ森下佳子さんは、土曜23時30分から放送される『だから私は推しました』(NHK)を手掛けます。
どちらも意欲的なオリジナル作なのですが、二人はこれまでプライム帯のドラマばかり手がけてきただけに、「あれっ?」と思う人もいるでしょう。
これは、制作サイドが、「岡田さんや森下さんほどの大物脚本家でも、『オリジナル作で勝負する』。あるいは『視聴率を気にせず伸び伸びと書いてもらう』なら深夜帯のほうがいい」と考えているからに他なりません。もともと夏は在宅率が低く、大型イベントの中継などで放送が飛び飛びになりやすいなど、視聴率が低迷しがちのため、各局ともに原作のある作品で安全策を採る傾向があります。
さらに制作サイドを悩ませているのは、近年「知らないものに手を出さない」「原作が評判のいいドラマを選ぶ」という視聴者の安全志向が高まっていること。実際に、昨年放送されたオリジナル作を振り返りながら考えてみましょう。
『FINAL CUT』(フジテレビ系)、『anone』(日本テレビ系)、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)、『もみ消して冬』(日本テレビ系)、『トドメの接吻』(日本テレビ系)、『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、『ヘッドハンター』(テレビ東京系)、『Missデビル』(日本テレビ系)、『崖っぷちホテル』(日本テレビ系)、『高嶺の花』(日本テレビ系)、『獣になれない私たち』(日本テレビ系)、『僕らは奇跡でできている』(フジテレビ系)の12作は、すべて全話平均視聴率1桁に終わり、ネット上で大きく盛り上がった作品もありませんでした。
◆オリジナル作『あな番』が人気の理由