一方、全話平均視聴率2桁を記録したオリジナル作は、『BG』(テレビ朝日系)、『アンナチュラル』(TBS系)、『リーガルV』(テレビ朝日系)、『大恋愛』(TBS系)の4作のみ。しかもネット上で盛り上がったのは、『アンナチュラル』と『大恋愛』の2作に留まりました。「プライム帯のオリジナル作で、視聴率を獲得し、ネット上で盛り上がったのは、16作中2作のみ」という低確率だったのです。

 また、深夜帯のため視聴率は低迷したものの、オリジナル作の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が大ブームとなり、『dele』(テレビ朝日系)が絶賛を集めました。この結果を受けて、「オリジナル作は深夜帯のほうがいい」という判断を下しはじめている業界関係者が増えているようなのです。

 原作アリのドラマが多い、その他の理由としては、「企画が通りやすく、メディアにも採り上げられやすい」「プロデューサーがドラマの題材を考えていたとき、原作を見てほれ込んでしまった」「出版社とタイアップして大々的にPRできる」「オリジナル作を制作するほど時間と費用に余裕がない」などのさまざまな事情があります。

 しかし、原作アリのドラマには、「すでに結末が世の中に出ている」「“60分×10話前後”の連ドラ仕様に脚色すると無理が出やすい」などのデメリットがあるのも事実。その点、春から2クールぶち抜きで放送されているオリジナル作の『あなたの番です』は、「結末がまったく読めない」「毎週変幻自在の展開で目が離せない」という魅力を武器に、右肩上がりで注目度を上げています。

 20世紀のドラマはオリジナル作が大半を占めていました。2000年代に入って原作アリのドラマが一気に増えましたが、2010年代に入ってから「ドラマはやっぱりオリジナル」という考え方が見直され、徐々に減少。それだけに今夏の「オリジナル作ゼロ」は衝撃的であり、ドラマにとって重要な多様性が失われることを不安視してしまいます。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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