◆ある飛行機の航行中の操縦室での会話
副機長が、機長にこんなことを話した。
「この飛行機に搭載されているエンジンが1基、故障で働かなくなる確率は、10万回のフライトに1回だそうです。この飛行機には、エンジンが2基ついていますから、両方とも故障して墜落してしまう確率は、10万分の1かける10万分の1、つまり100億分の1となります。これなら、まず、安心ですね」
2つのエンジンの電気系統や燃料注入の仕組みなどが、完全に無関係に作動するものである保証はない。また、2つのエンジンの点検や整備が、互いに無関係に、別々に行われるとも限らないだろう。
このように考えると、2基のエンジンの故障が無関係に起こるとは言い切れない。無関係であることが確認できなければ、確率の掛け算はできない。この機長は、副機長に対して、確率についての教育をしなくてはならないだろう。
このような笑い話で済んでいるうちは、まだいい。複雑な出来事の発生確率をみる上では、それぞれの出来事が無関係かどうかを冷静に考えることが、正しい理解や判断のために重要と言えるだろう。