国内

ネットでカジュアル化する薬物売買 大半は実態ない架空取引か

日本では免許を持たない者の大麻取り扱いは禁止されている

日本では免許を持たない者の大麻取り扱いは禁止されている

 普通に生活する限り、犯罪に関わりを持つことはないはずだと思って誰もが生活しているだろう。ところが、誰でも閲覧し利用できるSNSで、まるでお菓子についておしゃべりにするように、薬物についてつぶやくアカウントがいくつも存在する。ライターの森鷹久氏が、それら薬物アカウントの実態についてレポートする。

 * * *
 今日も“コレ”でぶっ飛びます──。

 こんな文言と共に、とある人物のツイッターアカウントに上げられていたのは、緑色のフワフワとした物体の写真。見る人が見れば一発でそれが何なのかわかるだろう。日本では所持や売買が禁止されている「大麻」だ。その人物のツイッターには“鍵”がかかっておらず誰からも見られる状態で、およそ一週間に一度のペースで「大麻」の写真だけでなく、大麻をタバコ葉と混ぜ、紙巻きたばこ状にした「ジョイント」に火のついた状態の動画までアップされている。

 自ら大麻所持、大麻の使用を喧伝しているようなもので、もし本当に使用しているなら当局が放っておかない。気になるのは、なぜこのような危ない写真や動画を、司法当局を含む不特定多数が閲覧できるSNS上にアップするのか、その目的だ。筆者は数ある「大麻アカウント」のうち、ダイレクトメールができる設定の数アカウントにメッセージを送り接触。そのうちの一人から、驚くべき彼らの「目的」を聞くことができた。

「売るとは書いていませんよ。でも買いたいやつは、持っているやつに接触してくるんです。薬物の売人が大っぴらに宣伝できるわけないでしょう? 売人という商売が成り立つのは、あっちから寄ってくるからです。営業なんかしなくていいんですから、SNSはうってつけです」

 東京都下に住むというW氏(30代)は、10代後半から大麻やコカインといった違法薬物にハマり、二十歳になる頃には薬物の売人として、六本木や渋谷のクラブ界隈でちょっとした有名人だったと自称する。その後、薬物売買で月に数百万円の利益を稼ぐようになると、信頼できる部下を使ってさらに“事業の手”を拡げていった。

「薬物ですから、その地域のケツ持ち…平たく言えば暴力団なんですが、そこに筋を通す必要があります。だからいろんなルート駆使してね、やってたんです、商売を。でも、ヤクザが(暴排条例などで)厳しくなってきて、ネットで売るようになったって感じ。ネットだといろんな人が買いに来てくれますからね。北は北海道から、南は沖縄の離島まで客がいますよ。売ります、って書かなくても、ブツの写真を上げとけば“売ってくれませんか”と連絡が来るんで。楽なんですよ」(W氏)

 確かに、ネット掲示板には今も「野菜、アイス押します」とか「緑17000」などの隠語と共に、メールアドレスが記載された書き込みが散見される。野菜とは「大麻」、アイスは「覚せい剤」、押すとは「売る」、緑1は「大麻一グラム」のことをそれぞれ指す隠語だ。「ディープ・ウェブ」とよばれる、アクセス主特定が難しい特殊なWebブラウザを介してしか利用できないウェブサイトや掲示板では、薬物だけでなく、違法なポルノ動画や盗品と思われる物品の取引も目立つ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン