「継投」だけでなく「継捕」で宮城大会2連覇を果たした仙台育英(時事通信フォト)
◆「継投+継捕」の仙台育英
宮城大会2連覇を果たした仙台育英の須江航監督は、練習のときから「球数管理表」を使って、毎日の球数をチェックしている。中遠投(60mほど)、シャドウピッチングやネットスローなどの回数も書き入れ、“投げすぎ”に気を配る。だいたいの目安は、1週間で300球以内だ。
「球数を投げれば投げるほど、間違いなくボールは来なくなります。ピッチャーのヒジや肩は消耗品です。このシートを見れば、誰が疲れているのかが一目でわかる。当たり前の話ですが、球数を投げていないピッチャーのほうがいい球がいきます」(須江監督)
須江監督は前任の仙台育英秀光中で、日本一1度を含む8年連続全国大会出場という輝かしい実績を残した。特徴的だったのは、投手陣全体の球速が伸びていくことだった。フォームの指導やトレーニングももちろん関係しているが、監督自身が理由のひとつとして挙げていたのが「うちは投げ込みをしていないから」ということだった。
また、須江監督は継投に加えて、「継捕」も採用している。2018年夏は3人の捕手でつないでいた。
「良いか悪いかは別にして、キャッチャーが代われば、野球が変わります。特に配球面は、人によって感性が違う。誰と組むかによっても、まったく変わってきます」(同前)
この夏も守備型の木村航、攻撃型の猪股将大で1試合を戦っている。基本的には猪股がスタメンマスクで、1年生の木村が抑えのキャッチャーとなるが、準々決勝だけは木村がスタメンだった。
「守り合いになると思ったので、守備型の木村を最初に使いました。ワンバウンドを止める技術は素晴らしいものがあります」(同前)
練習のときから投手の「球数管理」を欠かさない仙台育英・須江航監督
投手の特徴を出したければ、捕手を代えてみるのもひとつの有効な策となる。
この夏の甲子園も、継投が勝敗のカギを握る試合がいくつも出てくるだろう。それぞれの監督がどんな根拠と信念を持って、投手を使うのか──。こんな視点で見てみると、夏の甲子園をより一層楽しめるはずだ。
●おおとし・みのる/1977年生まれ。横浜市港南区出身。港南台高(現・横浜栄高)~成蹊大学卒。スポーツライターの事務所を経て2003年に独立。高校野球のほか中学軟式野球の取材・執筆活動を行っている。著書は『高校野球 神奈川を戦う監督たち』、『101年目の高校野球「いまどき世代」と向き合う大人力~』、『激戦 神奈川高校野球 新時代を戦う監督たち』、『名将たちが語る「これから」の高校野球』など多数。