──徴用工判決や慰安婦合意の一方的破棄もその考え方が元になっているというわけか。
呉:李朝でも“情理を追求する精神”が強固に働いていましたが、その伝統をひく現代韓国もまさしく“法よりも情が優先する”状況下にあります。韓国では酒に酔っての犯行であれば、「情理」の判断をもって必ず減刑されるし、単純暴力では前科の有無を問わず罰金・略式起訴で裁判までいかないのが司法界の慣例です。そのため、韓国には前科40犯、50犯がざらにいるのです。
日本をはじめ、近代法治国家の裁判では、審議を薦める具体的なルールがあり、“情理”や“情実”が絡む判断は規制・排除され、事実(証拠)に基づいた客観的な判断が下されていく構造になっています。韓国の場合は、そのときどきの“この辺が正しい”という国民の思いに引きずられます。つまり、あのときは間違っていないとされたが、今この時の常識からすれば間違っている、という国民の思いが正義になってしまうのです。だからこそ、慰安婦合意の一方的破棄や元徴用工者への賠償判決なのです。つまり、“国民的合意”があれば、国と国との約束を反故にしようが、あとでルールを自分たちに都合良く変更することなど意に介さないのです。だから、過去に親日だった者の子孫の財産を召し上げるなど過去に遡って法律を適用するようなことも平気なのです。
──そんな韓国を隣国にもつ日本はどうすればいいのか。
呉:まず、認識しなければならないことは、韓国は民主国家ではないということです。朴槿恵政権時に書いた記事が名誉毀損に当たるとして産経新聞のソウル支局長を起訴し、長期間出国禁止にしました。“自由、民主主義、基本的人権”などの基本的価値を共有する近代民主国家では決して起こりえない事態でした。さらに北朝鮮問題に関しても内政干渉を理由に北朝鮮の人権問題に向き合おうとしません。これは北朝鮮を刺激したくないと言うよりも、北朝鮮の体制をこのまま認めていこうというのが文在寅政権当初からの方針なのです。
現在、直面する韓国問題は北朝鮮におもねり従う韓国政権の「従北・人権問題」です。だからこそ、日本は仮に韓国がすり寄ってきても、毅然とした態度を崩さず、NOのときは、NOと突っぱねるべきです。現在、日韓関係は最悪の関係にありますが、決して妥協するべきではありません。過去2度ほど深刻な経済危機の時にも、日本は韓国に対し、多額の経済援助をしましたが、感謝するどころか「対応が遅い」などと文句を言う国であることを忘れてはいけません。現在、韓国は政治的にも経済的にもどん底へと向かっています。社会保障も整備されておらず、いずれ行き詰まることは確実です。3度目の深刻な経済危機さえ囁かれています。前述したように過去2回は日本が助け船を出しましたが、現状が続く限り、3度目はないでしょう。韓国は泥沼に足を踏み入れてしまったのです。
【PROFILE】呉善花(オ・ソンファ)/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。著書に『韓国と北朝鮮は何を狙っているのか』(KADOKAWA)、『超・反日 北朝鮮化する韓国』(PHP研究所)など多数。