再放送は当然ながら予算削減につながりますし、もともと夏は在宅率が低く視聴率が上がりにくいことも、今回の消極策につながっているのでしょう。
また、『点と線』『刑事一代』が2夜分の放送を1夜分に縮小再編集したことも、「名作と言えども、2夜に渡って長時間見てもらうのは難しい」「1夜で気軽に見られるものにしよう」という消極策の1つ。案の定、ネット上には『点と線』を見た視聴者から、縮小再編集したことで、「名作が損なわれた」という声も見られました。
今回の再放送戦略は、60周年企画というより、「コスパ、夏、視聴率」を考慮したものである可能性が高いため、仮に高視聴率を獲得できたとしても、テレビ朝日の評判が上がることはないでしょう。
やはりBSやCSではない以上、どんな名作でも再放送で視聴者の信頼を得ることは難しいものがあります。もしテレビ朝日の戦略に他局が追随しはじめたら、地上波のテレビ離れが加速しかねない危険な兆候ではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。