最近のアメリカの“お得意様”は台湾だ。台湾はアメリカ政府に戦闘機「F-16」66機と戦車「M1」108両の購入を要請したと報じられた。それかあらぬか、台湾の蔡英文総統が7月に訪米した際はニューヨークでの歓迎式典に厚遇で迎え入れられた。これまでアメリカ政府は「一つの中国」原則を主張する中国に配慮し、台湾総統のアメリカでの活動を原則的に非公式としていたが、今回、トランプ政権は武器を買ってくれる蔡総統の事実上の対外活動を容認したのである。

 日本の安倍政権も、これまでに陸上配備型弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」(2基で総額6000億円超と報道)や、1機100億円以上もするステルス戦闘機「F-35」147機(機体の購入だけで総額約1兆7000億円)の購入を決めてきた台湾以上の“お得意様”である。もし、トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との三度にわたる会談で米朝関係を改善したのであれば、むしろ軍備は縮小すべきはずだが、実際は逆の方向に行っている。おそらく北朝鮮についてトランプ大統領は、大統領選までに核実験やアメリカに届くミサイルの実験さえしなければ多少の危機を煽ってもOK、と考えているのだろう。

 とにもかくにもトランプ大統領は、来年の大統領選に勝つことしか頭にない。だからまるで自分が司会を務めていたテレビ番組「アプレンティス」のように“トランプ劇場”で国民を飽きさせまいとして次から次へと思いつくままに外交カードを切っているのだ。

 しかし、すでに手持ちのカードは心細くなり、出てくる施策はどんどん矮小化してテレビ番組というよりは“ツイッター小劇場”の様相を呈している。そして、もし再選されれば「後は野となれ山となれ」で、大統領職そっちのけでファミリービジネスに再び精を出すに違いない。そんな茶番劇に付き合わされて金蔓(かねづる)にされているのが、仲良しの安倍首相なのである。

※週刊ポスト2019年9月6日号

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