もともと、ロスで多くのミュージカルやショーに触れていたことに加え、子供の頃からのそうした仕事を通して、ショービジネスの価値や本質を、身をもって学んだ。

 1952年に日本に戻ると、米大使館の関連団体に勤務しながら、少年野球チームを結成。ある日、チームメンバーの4人の少年とミュージカル映画『ウエスト・サイド物語』を見に行き、感銘を受ける。その4人で、1962年に結成したのが、アイドルグループ「ジャニーズ」だ。ジャニーズ事務所を創設し、2年後にデビューさせた。

 しかし、当時日本の芸能界には「男性アイドル」というジャンルがなく、メンバー全員が中高生だったため、「ジャリタレ、ガキタレ」「男が踊って歌うなんてみっともない」との批判もあった。だが、アメリカのショービジネスを肌で感じていたジャニーさんは、こう思っていたという。

「この国の芸能界はアメリカのショービジネスより30年遅れている。その『隙間』にはビッグチャンスが眠っているのに誰も気づいていない」(小菅宏著『異能の男 ジャニー喜多川:悲しき楽園の果て』)

 その言葉のとおり、大人たちの批判をよそにジャニーズの人気は上がり続けた。ジャニーさんと親しかった業界関係者が語る。

「ジャニーさんは、日本の芸能界への危機感も強く感じていました。『ブロードウェイに負けない、世界に認められる日本のショービジネスを作る』、『来てくれたお客さまを飽きさせてはいけない』といつも話していました」

 リハーサルや稽古では、普段のジャニーさんが嘘のように厳しい時もあった。

「普段は穏やかなジャニーさんですが、通し稽古が始まると途端に眉を吊り上げて厳しい表情になり、舞台から目を離しません。本番直前に演出をガラリと変えることもしょっちゅうでした」(芸能記者)

※女性セブン2019年9月19日号

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