目は人が得る情報の9割を担っているという。見えているのが当たり前の日常では想像しにくいが、見えなければ生活はままならない。
高齢になればいろいろな機能が低下するが、目ももちろん老化する。代表的なのが白内障だ。50代では半数近く、80代以上ではほぼ100%の人が罹患しているという。
しかし、「年を取ったら目は悪くなるもの」で済ませてはいけない。あちこち弱る高齢者にとって、「しっかり見える」は重要なことなのだ。
受診・治療のタイミングを逃さぬよう、白内障について正しく知っておきたい。眼科専門医で、高齢者の症状にも詳しい平松類さんに聞いた。
「白内障の主な原因は加齢。年を取れば誰もがなる老化現象ともいえます」と平松さん。
目の中で、厚みを調節して見る物にピントを合わせるレンズの役割の水晶体が、劣化して白濁することで見えにくくなる。放置すれば、見えにくい不便が続くだけでなく、認知症のリスクも上がる。最悪の場合は失明することもある。今、世界の失明原因でもっとも多いのが白内障なのだ。
「ただ、症状の出方や進行具合はかなり個人差があります。水晶体の白濁は、人それぞれ濁り方が違うため、表れる症状も違うのです。たとえば濁り方が均一なら、光が通らず全体に暗く感じて見えにくくなります。逆にまだらに濁ると、目に入ってくる光が散乱してまぶしく見えることも。
そのほか物が二重、三重に見えたり、色合いが実際と違って見えたり。微妙な濃淡が見えにくいこともあります。水晶体の弾力も失われていくため、元来の老眼や近視も進みますが、老眼や近視のぼやけ方とは違って、曇りガラスやフィルターがかかったような見え方になります」
白内障の症状は少しずつ進行するため、本人自身もなかなか気づきにくく厄介だ。
老親の白内障に、普段から周囲の家族が気づけるポイントを7つ聞いた。
●ひどくまぶしがる
●微妙な色の濃淡が見えない
●色調が実際と違って見える
●掃除や片づけが疎かになる
●階段を踏み外す、転ぶ
●人の顔がわかりにくい
●映画の字幕や読書で疲れる
「高齢者の白内障は、見えないことによる言動から認知症と間違われることもよくあります。いずれも本人が自覚しにくいので、家族が注意して見守る必要があります」
イラスト/やまなかゆうこ
※女性セブン2019年9月19日号