国際情報

日本と韓国 WTOを舞台とする争いの現在地

近年は貿易問題での日韓対立も目立っている(AFP=時事)

 韓国政府は9月11日、「日本の半導体材料の輸出規制強化は不当」として世界貿易機関(WTO)に提訴した。このところ日本のメディアでは、「WTO」という言葉が日韓関係に絡んで頻繁に登場するようになっている。

 奇しくも同日、日本製産業用バルブに対する韓国の反ダンピング(不当廉売)課税は不当として日本政府がWTOに提訴した件で、WTO上級委員会(2審にあたる)は韓国側の協定違反を認定し、是正勧告を出した。

 この問題では日本が勝訴したと思いきや、韓国産業通商資源部が「韓国が最終的に大部分で勝訴した」と発表したため、日韓のメディアでちょっとした騒動になった。本当はどっちが勝ったのか。貿易問題に詳しい高橋洋一・嘉悦大教授はこう断言する。

「反ダンピング課税の是正を求めて提訴し、是正勧告の判決が出たのだから、部分的に韓国の主張が認められようとも、日本の勝ちであることは間違いありません」

 しかし、韓国が今後、WTOの是正勧告に従わない可能性もあるのではないか。

「15か月以内に勧告に従わず是正しない場合、(日本側が)対抗措置をとることが認められています。どんな措置をとるかはそのとき考えればいいことです」(高橋教授)

 韓国が反ダンピング課税を是正せず、日本が対抗措置をとったら、それを受けた韓国側が「元徴用工問題に対する報復だ」と再び言い出す可能性は十分にある。

 今年4月、福島県など東日本の8県産水産物に対する、放射能汚染を理由とする韓国の禁輸措置が非科学的であるとWTOに訴えていた件では、日本が敗訴したことは記憶に新しい。が、実は他にも日韓間でWTOを舞台に争う案件がある。

 韓国は2004年から、自動車や半導体製造設備の部品に使う日本製ステンレス棒鋼に約15%の反ダンピング課税をかけている。日本政府は韓国の措置を不当として、2018年6月にWTOに提訴した。日本経済新聞(2018年6月18日付)によると、対象製品の韓国市場でのシェアは、2002年の51%から2016年には13%にまで激減したという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン