「大韓民国臨時政府は、日韓併合期に李承晩ら独立活動家によって上海に設立されたが、どの国からも承認されず米軍に解体された。世界から認められなかったこの臨時政府の正統性を韓国憲法が宣言していることは、日韓併合そのものを否定していると読むことができる。日韓の歴史認識を巡る対立の根源がここにあるといっていいでしょう」
この前文の「抗日独立」の精神が、現在に続く反日感情の基礎にあるといえるのではないか。
文在寅大統領が前のめりになっている南北融和路線も憲法上の根拠がある。日本は、米国と軍事同盟を組む韓国を、北朝鮮の脅威にともに対抗する“準同盟国”であると位置付けていた。
しかし、文大統領は、日本が貿易管理規定で韓国を「ホワイト国」から除外したことに対し、「南北間の経済協力で平和経済が実現すれば、私たちは、一気に日本の優位性に追いつくことができる」と発言した。
韓国の憲法を読むと、そうした発言は必ずしも不思議ではない。前文以外にも「平和統一政策」の推進(第4条)を掲げ、〈大統領は、祖国の平和的統一のための誠実な義務を負う〉(第66条3)と定めている。“北朝鮮と協調して日本に対抗する”という文大統領の姿勢は、いわば韓国憲法上の“責務”ともいえるのである。
※週刊ポスト2019年10月11日号