5つの競技場の数値をすべて照合したところ、基本的に競技場近くに測定ポイントがなく、一番近い測定ポイントと比較するしかなかったが、韓国の「放射能汚染地図」には、参照したはずの「みんなのデータサイト」の数値より1~3桁も大きい数字で放射線量が記されていたのだ。
「みんなのデータサイト」共同代表の阿部浩美氏はこう憤る。
「事前に、共に民主党からデータを使用するという連絡が何もなかったので、朝鮮日報の報道で初めて知ったのですが、ホットスポットでないとありえないような高い数値が出ていて驚きました。
各競技場の位置に該当する測定地点があるのは福島あづま球場くらいですが、1平方メートル当たり205万7800ベクレルというとんでもない数値が出ている。原発事故直後の2011年のデータでもこんな数値はありません。
私たちは専門家の指導のもと、ホットスポットのデータが極力入らないよう注意して測定をしているので、こんな数値にはなりません。しかも、この放射能汚染地図では同心円状のグラデーションで汚染度が表示されているのですが、これも私たちが作成した地図とは大きく異なっています。
私たちの名前を使って、まったく別のデータを使うというやり方は、これまで測定に協力してくれた市民や地道に活動してきたスタッフの努力を無にする行為です。共に民主党には、釈明を求めていきます」
韓国与党の共に民主党は、「みんなのデータサイト」の資料をもとにしたと言いながら、由来不明の極端に大きな数値を記載していたのである。
みんなのデータサイト事務局では、該当する地点や測定値がデータベースにみつからないことや、汚染地図が示す日本各地への汚染の広がりが独自に作成した地図と合致しないことなどを問題視し、9月27日、韓国の共に民主党に対し、「マップ作成時に使用した元データと出所の開示」と「このような発表となった経緯についての説明」を求める申し入れ書を、地図を作成した議員個人のFacebookページを通じて送付した。しかし、9月30日18時の時点で回答はないという。
日本政府は韓国の政府与党によるこうした行為を看過すべきではない。
●取材・文/清水典之(フリーライター)