国際情報

千葉の国道沿いに実在する「怪しすぎる中華料理店」の正体

メニューの日本語が怪しい中華料理店(写真はイメージ)

 中国の人口は14億人。海外で暮らす華僑や華人は6000万人。中国人旅行者は全世界で年間延べ1.5億人。──世界のどこにでも、中国人はいる。『もっとさいはての中国』著者の安田峰俊氏が、現代中国のディープな一端を探るべく、関東郊外のとある中華料理店を訪れた。

 * * *
 千葉県S市の町外れ。畑の牛糞の匂いをたっぷりと吸い込んで九十九里平野を吹き抜ける強風に「営業中」と書かれた赤いのぼり旗がバタバタと翻っていた。

 私の目の前にあるのは、濃い緑色の看板に赤文字で「中華料理」と書かれた店舗だ。近年、地方の国道沿いなどで増加している中国人経営の格安中華料理店である。なぜか屋根がモダンな三角形なのは、もともと喫茶店か洋食屋だった建物に居抜きで入居したからに違いない。

「塩台湾ラメン」、「桜エヒ飯」、「カレ炒飯」──。中国人が経営する店舗にもかかわらず、黒板になぐり書かれたメニュー名は、なぜかカタカナのみならず漢字まで下手だった。

 他に客はいない。中国東北地方(旧満洲)の出身らしき発音の中国語を話すおばちゃん店長がイスに座ってスマホをいじり、彼女の子どもらしき3歳くらいの男児が走り回って遊んでいる。実にゆるい雰囲気だ。

──この日、私はなぜ千葉県の微妙な中華料理店に来ていたのか。それは、中国人の不法就労者(黒工=ヘイゴンという)事情を追いかけていたからだ。2018年6月現在、在日中国人の総数は74万人。うち不法滞在者は9500人ほどで、多くが不法就労状態にある。もっとも一昔前とは違い最初から不法就労を目的に来日する中国人はほとんどおらず、逃亡した技能実習生やオーバーステイ状態の留学生が大部分だ。

 不法滞在者といえば外国人犯罪のイメージも強いが、実際はささいな理由(職務質問に遭う、重病で入院する、交通事故の被害者になるなど)で不法滞在がバレるだけで入管への収容や強制帰国に遭うため、一般の在日中国人以上に目立たずおとなしく暮らす人も多い。

 ゆえに、黒工たちがどこで何をしているかは、日本人はもちろん正規の在留資格を持つ在日中国人たちもほとんど知らない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト