イエメンで撮影されたドローン(写真/AFP=時事)

 典型はフランスのエマニュエル・マクロン大統領の誕生だ。既存政党の基盤がない彼は個人で政治団体「前進!」(現在の「共和国前進!」)を結成し、2017年の大統領選挙に独立系候補として出馬し、いわば徒手空拳で当選した。当初は泡沫候補扱いだったマクロン氏が勝利できたのは、SNSでネット社会の支持を得たからである。その後の総選挙では全選挙区に候補者を擁立し、一気に政権与党になってしまった。

 ことほどさようにSNSなどのネット社会は世界を急速に不安定化させ、大衆が自国(あるいは自説)第一主義に走ってしまう要因になっているのだ。

 もう一つ、技術の進化が世界を変えつつあるのがドローン兵器である。9月に起きたサウジアラビアの石油施設2か所に対する攻撃は、爆弾を抱えた18機の「神風ドローン」と7発の巡航ミサイルによるものとされるが、これは軍事的には衝撃的な“事件”である。

 今回の場合、犯行がイエメンの親イラン反政府武装組織フーシ派であれイランであれ、ドローンはこれまで想定されていた航続距離を大幅に上回る1000km以上の距離を飛行し、極めて精密にピンポイントで目標を破壊しているからだ。

 しかも、ドローンは低空を飛んでくるのでレーダーに捕捉されにくく、イージス艦や迎撃ミサイルでは撃墜できないと思われる。INF(中距離核戦力)全廃条約を破棄したアメリカやロシア、あるいは北朝鮮などはミサイルの開発競争を繰り広げ、日本は陸上配備型弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」やステルス戦闘機「F-35」の導入を進めているが、安価なドローンで今回のような攻撃ができるのであれば、それらはほとんど意味をなさなくなる。

 ちなみに、いまドローン技術は中国が圧倒的に先行している。1000機のドローンをプログラミング通りに動かして空中に複雑な文字を作ることも可能になっている。このドローンに爆弾を搭載すれば、中国人民軍の台湾侵攻は容易になる。北朝鮮は低空を飛ぶロケット砲を実験しているが、ドローンを使えば、その必要はなくなるかもしれない。「神風ドローン」は、世界の安全保障を一変させる“貧者の戦略兵器”になる可能性もあるだろう。つまり、今や地球上に安全な場所はなくなったのである。

関連記事

トピックス

第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
2000年代からテレビや雑誌の辛口ファッションチェックで広く知られるようになったドン小西さん
《今夏の再婚を告白》デザイナー・ドン小西さんが選んだお相手は元妻「今年70になります」「やっぱり中身だなあ」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「王子と寝ろ」突然のバス事故で“余命4日”ののち命を絶った女性…告発していた“エプスタイン事件”【11歳を含む未成年者250名以上が被害に】
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン